【書評】想像以上の恐ろしさ。ネット炎上の被告に待ち受けていること

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今や毎日のように、あらゆるネット空間で起きている感のある炎上ですが、軽い気持ちでの「加担」は思った以上の事態を招いてしまうようです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、現代社会の闇とも言うべき炎上の構造を解析した一冊。そんな炎上沙汰で訴えられた人間が置かれるのは、想定を超える厳しい境遇でした。

偏屈BOOK案内:吉野ヒロ子『炎上する社会 企業広報、SNS公式アカウント運営者が知っておきたいネットリンチの構造』

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企業広報、SNS公式アカウント運営者が知っておきたいネットリンチの構造

吉野ヒロ子 著/弘文堂

「炎上」という現象については「あっしには関わりのないことでござんす」と思ってはいるが、編集後記で不適切なことを書いて、デスクから注意を受け、速攻で書き直すのは、いつものことだ。そういう意味では、わたしはガンコ者ではなく、とても柔軟で温厚な人物であろう(?)。我ながら軽率であるのは確か。

ネットで批判が殺到する「炎上」と呼ばれる現象が頻繁に起きるようになって、10年以上経つらしい。よく考えると妙な現象で、本来関係のない多くの人が、なぜか関係あることになって感情を動かされる、というのが特徴である。関係ないのに前のめりに反応してしまう。

炎上については、たとえば荻上チキ『ウェブ炎上』、安田浩一『ネット私刑』、スマイリーキクチ『突然、僕は殺人犯にされた』など、既に多くの論考が出版されている。本書の著者は、帝京大学准教授、内外切抜通信社特別研究員。専門は広報論、ネットコミュニケーション論。

この本では、炎上という現象をネットだけの問題としてではなく、ネットの登場によって生じた、社会全体の変化のあらわれではないかという視点から、主に企業の炎上事例を考察している。

読者としてはレポートや卒論などで、ネットコミュニケーションのあり方を取り上げたい学生や、今のネット社会はどうなっているのか考えてみたい人、ネット炎上の対策を知りたい企業広報の担当者を想定しているようだ。

構成は以下の通り。炎上という現象はどのように変化してきたか、Twitterでは炎上について実際にどのような投稿があったのか、炎上に参加している人の傾向、炎上は企業の評判にどう影響するか、企業広報は炎上にどう対応すべきか、そして、ネットは社会をどう変えたのか。

著者は2015年からこの研究を始め、講演やテレビ出演などで炎上の話をしているが、そういう機会に思うことは「炎上の怖さを知らない人はまだまだ多い」ということだった。裁判沙汰になったら、被告のスマホやパソコンは押収され、任意取調べで拘束が発生する。取り調べ自体が精神的にきつい。

「炎上○×クイズ」から。

  1. ネットで批判されるだけなので無視すれば問題ない
  2. 炎上には日本の集団主義が背景にある
  3. 炎上は匿名だから起きる
  4. 経済的に恵まれず社会に恨みを持つ人が炎上に参加している

さあ、○か×か。分からない人はいないよね。引用文献は細かい字で9ページにわたる。索引も充実している。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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