滋賀県の東近江市永源寺診療所所長を務める花戸貴司医師を中心に、どんなに老いても住み慣れた地区で暮らしたいという方をサポートする目的で設立された「チーム永源寺」。地域一丸となり高齢者や要介護者を支えるその姿勢は、人々から大きな信頼を得るまでに至りました。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では花戸先生本人が、現場で気付かされた大切なこと、実感できたことを語っています。
「在宅での看取りが半数」という驚くべき地域の力
8割の人が病院で亡くなる日本において、在宅での看取りが半数という驚くべき地域があります。滋賀県東近江市の永源寺地域です。
『致知』6月号には、地域ぐるみで高齢者や障碍者を支える「チーム永源寺」の中心メンバー・花戸貴司医師がその秘密をお話しされています。
超高齢社会を迎えたいま、花戸医師の取り組みは一つの指針となるはずです。
高齢者、介護が必要な方の訪問を続けていると、病気の治療よりも、食事や入浴など日常生活のサポートのほうが重要であることに気づきました。そこで、動けないで困っている人には介護スタッフ、薬の管理ができていない人には薬剤師さんに訪問して様子を見てもらうようお願いしました。
でも、それだけでは足りない。現場で分かったのは、困っている人を支えるには介護保険など従来の制度以外の取り組みが必要なことでした。例えば、心細いから話し相手がほしいとか、ちょっとした買い物、ゴミ捨てを頼みたいといった声を耳にした時、制度だけでは何もできない。そこで考えたのが、ご近所の方やお友達、あるいは自治会、民生委員の方に仲間になってもらうよう個別にお願いすることでした。
買い物が大変という声には商工会の人々から移動販売を始めようというアイデアが生まれ、生きる苦しみに悩んでいる人にはお寺さんなど宗教者に関わっていただいたりと、より幅広い地域の繋がりが生まれ始めたんです。もちろん、警察や消防、地域おこし協力隊の若者たち、就労支援団体の方なども積極的に連携しました。
この間は文字通り試行錯誤の連続でした。私自身、祭りや草刈り、溝掃除といった地域の行事に参加するなど地域の人たちと共に過ごす時間を多く持とうと心掛ける中で少しずつ理解を得てきた部分が大きいです。そして、診療所で行う在宅患者さんのことを話し合う会議にもいろいろな立場の人に参加してもらえるようになりました。患者さんやご家族から「チームで支えてくれるのが心強い」という声を聞いたのも大きな後押しになりました。
会議以外にも患者さんのお薬手帳や介護日誌にはその人に関わる全員が目を通し、定期的に情報交換に務めます。インターネットが進んだ現在ですが、このようなアナログの情報交換のほうが「顔の見える関係」に繋がっていることも実感しています。
このように医療や福祉だけで支えられない部分を近所の人たちも交えて助ける仕組みが定着したことで、多くの方が「これからも自宅で暮らしていける」という安心感を抱くようになりました。
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