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米国「日本渡航中止」と国連「戦時中」認定の“助け舟”を黙殺する菅政権、五輪中止のラストチャンスが消滅した

アメリカ国務省が日本に対する渡航警戒レベルを最も厳しい「渡航中止・退避勧告」(レベル4)に引き上げたことが報じられ、日本国内で大きな波紋が広がっている。

今回の渡航警戒レベル引き上げは、米疾病対策センター(CDC)の疫学的分析を反映したものと見られており、CDCは「ワクチン接種を完了した旅行者でも変異株に感染し、拡散するリスクがあるかもしれず、日本への全ての旅行を避けるべきだ」と警告している。

今年4月下旬に「レベル4」対象国を約150か国まで拡大していたアメリカだが、その際に日本は「渡航を再検討」(レベル3)を維持するとしていた。ところが、その後も日本国内で感染拡大が収束せず、さらにワクチン接種の遅れも指摘されることから、今回の判断に至った模様だ。

アメリカ「渡航中止」国連「戦時中」で五輪中止への筋道が…

アメリカ選手団の東京五輪への派遣の是非を検討する判断にも影響するとされる、今回のアメリカ国務省による決定。いっぽうで、日本国内の反応として多く見られるのが、これは五輪中止の「ラストチャンス」ではないかという声である。

今回のアメリカによる「渡航中止」判断と、ほぼ時を同じくして報じられたのが、国連のアントニオ・グテーレス事務総長による「世界は新型コロナウイルスとの戦争状態にある」という発言。24日に開幕した世界保健機関(WHO)の年次総会での発言だが、これが「五輪中止」への道筋になるというのだ。

というのも、IOCの規定の中に「参加者の安全が深刻に脅かされている場合」に、開催都市からIOCに対して開催を返上できる、というものがあるという。実際、1940年に開催予定だった東京五輪は、日中戦争の影響もあって日本側から開催を返上している。

つまり、国連のトップが今の世界の状況が「戦時中」との見解を公式に表明したことで、日本も上記のケースのような形で開催を中止にすることができ、さらにその際には、中止による賠償金も発生しないとのことだ。

世界最大の選手数を誇るアメリカによる「渡航中止」判断、さらに国連による「戦時中」判断によって、日本はごく自然な流れで五輪中止の判断が下せ、さらに都民をはじめとした国民の負担にもなりかねない「多額の賠償金」問題もめでたく解決。「外圧」という形でしか中止を決断できないのは情けない限りだが、見方を変えればまさにこの上ない「ナイスアシスト」「お膳立て」をしてくれているというのだ。

国連とアメリカによるお膳立てを「黙殺」する日本

ところが、今回のアメリカによる「渡航中止」判断に対する政府などの反応を見ると、どうやら日本はこの有難いお膳立てを「黙殺」する気でマンマンのようだ。

25日午前に相次いで会見を行った加藤官房長官と丸川五輪相だったが、アメリカの「渡航中止」判断に対して加藤官房長官は「今回の判断と米国からの選手団の派遣は関連していないとの説明を米国から受けている」と発言。さらに丸川五輪相も「今回の措置は予防的な措置。必要な場合の渡航までは禁止されていない」とコメントするなど、五輪開催への影響はないとの見方を揃って強調している。

いっぽうで小池都知事も25日に報道陣の取材に応じ、アメリカのレベルの引き上げに対し「全国のさまざまな状況を見た判断だと思う」と、東京以外の感染状況も考慮された可能性を指摘するとともに、「安全安心な大会にするために総力を挙げて取り組まないといけない」と紋切り発言。小池都知事としては特に懸案だった「賠償金問題」もクリアできる筋道なのにも関わらず、それでも「五輪中止カード」は切らないようだ。

【関連】五輪中止の手段は“玉音放送”のみ?バッハ会長「五輪のため犠牲を」発言で反発殺到も、開催強行へ特攻する日本

新型コロナの感染拡大がまったく収束しないなか、それでも五輪開催強行へと頑なに突き進んでいく有様を、敗色濃厚な状況でも戦争を止められなかった先の大戦時の日本のようだと指摘する声は多いが、ネット上では今回のアメリカと国連による「中止の後押し」を、さしずめ「ポツダム宣言」のようなものだとする意見も見られる。

実際の歴史において、ポツダム宣言を「黙殺」した日本は、その後さらなる悲惨な事態を招くことになったワケだが、今回もそのような結果にならないことを祈るばかりだ。

Next: 「小池都知事と菅義偉首は開催したいと駄々っ子」

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