物語と共にたずねる―文学に描かれた、もうひとつの京都

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2021/05/26

京都には文学や物語に登場するスポットがたくさんありますよね。今回は、そんな文学や物語に描かれた京都をご紹介。

もしかして、「子どものころに読んでもらった」「学生時代に読んだことがある」という本が多いかもしれませんが、改めて読み直すと、これがまた新たな発見があったりするんです。 美味しいコーヒーや紅茶を入れて、文学に描かれた、もうひとつの京都を旅しませんか。 

※ 引用はルビを省略させていただきました 

日本最強の鬼・酒呑童子伝説が残る大江山(福知山市)/『酒呑童子』

「そうか、気のどくに。わしらは、その酒呑童子をたいじしにまいったのじゃ。」そこでさむらいたちは、そのむすめさんのあんないで、山をどんどんのぼっていった。すると、大きなほらあながあったそうや。

再話・高橋良和「酒呑童子のつの」 『京都府の民話』(オンデマンド版)より 偕成社2000年 46頁

日本に鬼伝説は数あれど、京都の鬼伝説といえば酒呑童子(しゅてんどうじ)が有名です。酒呑童子は福知山市・宮津市・与謝野町にまたがる大江山に住んでいたといわれる鬼の頭領、盗賊の頭目。

お酒が好きで、夜になると都などから娘をさらっていくので、天皇の命により源頼光、坂田公時、渡辺綱ら6名が山伏の姿に身をやつし、酒呑童子を成敗しに大江山へ向かうのです。

酒呑童子の物語はさまざまな本に書かれていますが、現存する最古のものでは14世紀の南北朝時代に描かれた香取本『大江山絵詞』(重文)に、この物語が記されています。

鬼の足跡
頼光の腰掛岩

今も大江山には「鬼の岩窟」をはじめ鬼に関連する痕跡がいくつも残っていて、美しい二瀬川の渓流沿いを散策しながら、「鬼の足跡」「頼光の腰掛岩」を見たり、大吊橋「新童子橋」からの眺望を楽しむことができます。

また、大江山の中腹には日本の鬼の交流博物館があり、酒呑童子をはじめ鬼について詳しく知ることができます。その先にはウルトラマンのデザイナーで知られる成田亨さん作の「鬼のモニュメント」があり、こちらも必見です。


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双子の一人、苗子が暮らす北山杉の里(京都市・北区中川)/『古都』川端康成

たいていの家は、軒端と2階とに、皮をむき、洗いみがきあげた、杉丸太を、一列にならべて、ほしている。その白い丸太を、きちょうめんに、根もとをととのえて、ならべ立てている。それだけでも、美しい。どのような壁よりも、美しいかもしれない。

川端康成『古都』 新潮社 2018年 246頁

幾度も映画やテレビドラマ化されてる川端康成の名作です。

京都市の室町に立つ老舗呉服商の美しい一人娘・千重子は祇園祭の宵山の晩、御旅所で自分とそっくりな娘、苗子出会います。苗子は千重子を一目見て「あんた、姉さんや。」というのです。実は千重子と苗子は北山杉の里で生まれた双子で、千重子だけが生まれてまもなく呉服商の前に捨てられたのでした。

互いにひかれあい、懐かしみあいながらも育った環境の違いから一緒に過ごすことはできない切なさ。京都の名跡や祭り、行事と共に四季折々の風景が描かれた美しい作品です。

北山杉は、桂離宮や修学院離宮をはじめ茶室や数寄屋建築などに使われている建築用材。苗子は、その北山杉を育て加工する里、中川で育ちました。伐採された北山杉は皮をむいたあと、さらに美しく磨かれ北山丸太として加工されます。苗子は、ここで丸太を磨く仕事をして暮らしていました。

今も中川に行くと、北山杉を扱う家が川沿いに立ち並んでるようすを見ることができます。近くには小説の中にも登場する菩提の滝や500年台杉、北山杉の母樹がある中川八幡宮があります。

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