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コロナ禍の「物価下落」は政府の勘違い。見えないインフレ圧力が日本と世界経済を突き落とす=斎藤満

日本でも昨年のインフレ率低迷は、コロナの影響にしている面があります。しかし、そもそも昨年のコロナ禍でのデフレは、言われるほど大きくなかったとみられます。コロナ危機の影に隠れて、気づかぬうちにインフレ圧力が高まっています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年5月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

コロナ・デフレの反動?

米国のインフレ率が上昇していることについては、当メルマガの5月17日のレポートでも紹介しました。FRBは足元のCPI上昇を、昨年春がコロナで大きく下落した「ベース効果」といい、従って今回の上昇は一時的と言っています。

日本でも昨年のインフレ率低迷は、コロナの影響にしている面があります。しかし、そもそも昨年のコロナ禍でのデフレは、言われるほど大きくなかったとみられます。

米国の消費者物価上昇率は食料とエネルギーを除いたコアで、2019年の2.2%から2020年は1.7%に低下しました。このうち、新型コロナの感染ショックが走った昨年春の動きをみると、4月が前月比0.4%下落、5月が0.1%下落と、2か月間物価が低下しましたが、その後はすぐに持ち直しています。

日本も米国の「コア」に相当するエネルギーも除いた「コアコア」をみると、2019年の0.6%の上昇から0.2%の上昇に減速しています。やはり前月比では昨年4月に0.3%下落しましたが、その前後での下落はなく、1回限りでした。

その後、政府の「Go To」キャンペーンで宿泊代などが下落して全体を下げましたが、これはコロナ・デフレではなく、政策対応によるものでした。

つまり、コロナ危機下での物価の下落は一般に認識されるほど大きくなかったことになります。

FRBのいう「ベース効果」も決して大きなものではありませんでした。これは、コロナ・ショックによる需要減を打ち消すような、目に見えない上昇圧力があった可能性を示唆しています。

コロナの二面性

その点、コロナ禍には感染防止のために人流を抑え、経済活動を制限する中で、所得・需要の減少によるデフレ圧力が出る面と、生産や輸入ができずに供給が減り、品薄で物価高となる面とがあります。

つまり、通常の景気悪化によるデフレ圧力の発生と異なり、コロナ禍では供給制約によるインフレ圧力も同時に発生、またコロナ禍ゆえに、需要が集中するものもありました。実際、マスクや衛生商品、保存食などは価格が上がりました。

例えば、労働集約的な農水畜産業では、人が確保できないために、生産、収穫量が減り、価格を押し上げている面があります。作物を収穫する人手がなく、また収穫しても出荷する人がいないために供給量が減るケースが少なくありません。

また対面型サービスでは、通常客が減るだけならデフレ圧力がかかりますが、店も開けず、サービスの提供も減って需給両面が減り、価格下落を阻止している面があります。

Next: 気づかぬうちにインフレ圧力も。このまま価格が上がるとどうなる?

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