菅首相は11日からロンドンで開催されるG7首脳会談への参加を決めました。しかし、十分な準備ができているとは思えず、「ひとり負け」状態の日本は厳しい状況に置かれそうです。東京五輪について問われるのも確実で、どう答えるのでしょうか?(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年6月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
菅総理の参加実現へ
今週末6月4日~5日のG7財務相会議に続いて、来週11日~13日にはロンドンでG7サミットが開催されます。いずれも体面で行われます。
当初、菅政権がそれまで持つのか、菅総理の代理人の出席になるのでは、などの憶測が飛びましたが、総理は10日から14日にかけてロンドン訪問の予定が組まれました。
安倍前総理と麻生副総理・財務大臣が密かに「菅降ろし」を画策していたとも言われ、五輪開催中止表明をもって、菅退陣とのシナリオもありました。
それだけに、サミット参加を決めたのは良いとしても、参加に向けての十分な準備ができているとは思えず、菅総理もロンドンでは厳しい状況に置かれそうです。
日本「ひとり負け」で立つ瀬なし
サミットのテーマの1つは、コロナ禍で世界経済の回復をいかに進めるか、という点が挙げられています。
G7参加国では、米国が年明け後も景気絶好調で、カナダがこれに続きますが、日本と欧州は1-3月のGDPがマイナス成長となっています。
英国はロックダウンもあって1.5%減、ユーロ圏は0.6%減で、特に最大の経済規模を持つドイツが1.7%減となり、ユーロは2四半期連続のマイナスで景気後退に入っています。
日本も緊急事態宣言などの発令下で、1~3月は1.3%減とまたマイナス成長となりました。
欧州とともにマイナス成長で、それぞれに圧力がかかりますが、足元の状況は日本と欧州とではかなり条件が異なります。
英国は月次のGDPでみると、3月が前月比2.1%成長と急回復しています。すでに成人の8割以上が少なくとも1回のワクチン接種を終え、経済の正常化が進み、体面サービスも復活しています。
ワクチン接種が遅れていてロックダウンを実施する地域が多かったユーロ圏も、ワクチン接種が進むとともに感染者数が目立って減少し、経済の正常化が進んでいます。
当初は深刻な感染に見舞われたイタリアでは、外ではマスクを着用しなくてもよくなり、海外旅行も可能になりました。フランスも感染者の減少とともにすでにプラス成長に戻り、ドイツも4月の指標は改善が目立ちます。
従って欧州勢はコロナ対策や経済支援策の成果を主張しやすい状況にあるのに対し、日本は成果を示すものがなく、ワクチン接種はOECD加盟国の中で最も遅れ、未だに最低1回の接種を受けた人の割合は成人の10%弱にとどまっています。