中米・エルサルバドルのブケレ大統領が、なんとビットコインを法定通貨にしたいという考えを示し、世界中に大きな衝撃を与えている。
報道によると、これは米・マイアミでのビットコイン関連のイベントにビデオ出演した際の発言で、「来週、ビットコインを法定通貨とする法案を国会に提出する」と明言したという。
ブケレ大統領はさらにツイッターに投稿し、ビットコインの資産価値は6800億ドル(約75兆円)に相当すると指摘。このうちの1%がエルサルバドルに投資されれば、「国内総生産(GDP)を25%押し上げる」との期待を抱いているようだ。
実現すれば世界で初めての事例になるとみられ、ネット上では期待の声もあがるいっぽうで、乱高下を繰り返している暗号通貨だけに、それを法定通貨するなど正気の沙汰じゃない、といった否定的な声も多くあがっている。
マネロンで経済立て直し?というトンデモ説も浮上
長らく続いた政情不安などにより国内産業が疲弊していることもあり、人口640万人の国ながら140万人がアメリカ等に移り、出稼ぎに励んでいるというエルサルバドル。報道によると、外国からの送金額は2020年で59億ドル(約6500億円)。国内総生産(GDP)の約22%相当と、経済の大部分を占めるという。
ただ、海外送金には高額の手数料が必要で、ただでさえ豊かでないエルサルバドル国民の懐を圧迫する形になっていたという。ブケレ大統領は、スマホひとつで簡単に送金ができるビットコインを使用することで、「100万を超える低所得世帯が受け取る金額が毎年、数十億ドル増加する」と、そのメリットを力説しているという。
そんなエルサルバドルといえば、世界でも有数の「ギャング大国」であることでも知られる国。全人口のうち約50万人がギャングとその家族、あるいは関係者であるとの説もあり、当地の警察官・軍人を合わせた数を遥かに凌駕している。
昨年ごろには、取締りによって捕まった多数のギャングたちによって、このコロナ下にも拘らず刑務所内が「密」になっていると伝えられたのが、大きな話題となったことも。先述の海外送金に関しても、高い手数料を取られた上に、銀行の外にはギャングが待ち構えていて……といった話からも、その治安の悪さが窺い知れる。
エルサルバドルの状況は、読めば読むほど凄まじい。
海外送金で手数料と時間をかけてお金を受け取った後、銀行の外にギャングが待ち構えていて、さらにお金を取られる。
そんな中、現金経済からキャッシュレスに移行するだけでも大進歩。加えてビットコインで海外送金や米ドル金融緩和に対処する。
— 星 暁雄 (@AkioHoshi) June 7, 2021
ただ、2019年のブケレ大統領就任後は、国内でのギャング絡みの殺人率が前年比でほぼ半減しており、その驚くほどの減少ぶりに、大統領側とギャングの間で、殺人を減らすのと引き換えに何らかの融通を図るといった交渉があったのでは、という噂も実しやかに流れているという。
このような状況もあってか、ネット上の一部からは、ビットコインを法定通貨とすることで、ブラックマネーを集めて大規模なマネーロンダリングを行い、それにより国の経済の立て直しを狙っているのでは、といった説も浮上。まさかと思うような話だが、ギャングの存在がすっかり根付いている土地柄、さらに同国のジリ貧な経済状況を考えると、まったく荒唐無稽な話とも言い切れないかもしれない。
エルサルバドルはブラックマネーを集めて大規模なマネーロンダリング国にすることで経済立て直しを図ろうって策なのか、自国のギャングが政治も担ってるって話なのかよくわからない
— てんどん (@magic_tendon) June 6, 2021
エルサルバドルはBTCマネーロンダリング国家になるのだろうか
— ただの猫 (@bittercoincash) June 6, 2021
ギャングがイーロン・マスクを的にかける?
このように世界中に衝撃を与えている今回の件だが、ビットコインのチャートのほうは大きな動きはなく、今のところ影響はなかった模様。ビットコインのホルダーにとって、いま最も気になっているのは、エルサルバドルよりもやはり、テスラ社を率いるイーロン・マスク氏の動向のようだ。
ここ最近の暗号通貨界隈をすっかり支配しているといっても過言ではないマスク氏。今月4日には自身のツイッターに投稿した、ビットコインのロゴと2つに割れたハートマークを付けたツイートが、ホルダーたちの憶測を大いに呼び、同日中にビットコインは約7%も値を下げ、一時は36,500ドルを割り込む事態となったばかりだ。
#Bitcoin 💔 pic.twitter.com/lNnEfMdtJf
— Elon Musk (@elonmusk) June 4, 2021
まるで相場の混乱を楽しんでいるようにも見えるマスク氏による一連の行動だが、案の定怒っている人間は多いようで、ついにはハッカー集団・アノニマスが「一般の勤労市民への投資を軽視している」として、マスク氏に対して宣戦布告。ネット上では「暗号資産みたいなバクチに手を出す人間のどこが勤勉なんだ?」といった冷静なツッコミもあるものの、アノニマスの宣言に対して好意的な声が多いようだ。
もちろん、先述の通りエルサルバドルがビットコインを法定通貨とする動きが本格化すれば、このようにいたずらにビットコインの下落を煽るようなマスク氏の行為は、国としてももちろんのこと、暗号通貨で資金洗浄を目論むギャング勢力にとっても、目障り以外の何物ではないはず。そうなると、ギャングがマスク氏を標的にする可能性も無きにしも非ず……と、ネット上では心配する声があがっている。
エルサルバドルのギャングにイーロンマスクがボコされるまでは読めた
— 株ゲーマー X (@X36129183) June 6, 2021
エルサルバドル&ビットコインの件、2階建てでもネタにされてるけど、イーロンマスクが仕手行為できなくなる点では良いかもなw
この国ってギャングの巣窟らしいから、イーロンみたいに相場操縦してイキってたら抹●されるな(´.ω.`)— おっくう【統計投資家】 (@okkubbq) June 6, 2021
今回のエルサルバドルによる驚きの方針表明が、昨今の大幅下落で「オワコン説」も囁かれる暗号通貨界隈、さらにはマスク氏の命運にどういった影響を及ぼしていくのか。非常に興味深いところである。
Next: 興味本位で旅行でも行ってみるか~と調べたら…