新型コロナのワクチン接種を行う自衛隊の大規模接種センターで、8割近くの予約枠が余っていることが判明したことが、ネット上などで大きな話題となっている。
先月24日の開始から2週間以上が経った大規模接種センター。開設当初は混雑していたものの、ここに来て出足が鈍っているようで、今月7日から始まった来週以降の接種予約に関しては、東京では来週が約76%、再来週では93%以上の予約枠が残っているとのこと。大阪でも再来週の予約枠が94%以上埋まっていないと報じられている。
この傾向は東京・大阪だけではないようで、広島県福山市の会場でも1日最大1,800人が接種できるところ、初日はわずか89人と予測よりかなり少ない人数となっているという。
高齢者以外も受付開始も接種券はまだ届かず…
自治体に“上級国民待遇”を迫った某ドラッグストア創業者や、余った高齢者用のものをコッソリ打った地方の首長に対して、「ズルい」といった声もあがるなど、接種スタート当初は我先にと求められていたコロナワクチン。
ところが、今ではこの不人気ぶりということで、なんとも不思議な感じもするが、どうもこの“ガラガラ”の原因は「政府が高齢者のニーズを読み違えたから」という説が濃厚のようだ。
報道では「はるばる大手町まで電車を乗り継いで行くのは高齢者からすれば、体力や気力が必要」「ネットからしか予約が取れないというのも大変」といった防衛省関係者のコメントも紹介されていたが、要はそんな大変な目をするぐらいなら、少しぐらい時期が遅くなっても近所のかかりつけ医で打つほうがイイと考えた方が多かったということで、そういったある種の「国民目線」が読み切れなかったわけだ。
接種率アップを目指して政府が並々ならぬ意気込みで始めたものの、開始当初からいろいろと多くのツッコミどころが指摘されていた大規模接種センター。それがここに来て、まさに現実のものとなっているという印象で、ネットからは「しょせんは菅首相お得意の“やってる感”を演出するためのものなだけ」といった厳しい声も聞こえてくる。
【水増しワクチン接種数以外何もしない】スガ首相は、1日100万回接種を党首討論でアピールしたが、実際は60万回のようだ。リスクの高い高齢者対策に鳴り物入りの自衛隊大規模接種センターはネットだけで早くも失敗。ただ“やってる感”だけもアベを継承。https://t.co/Zg5uNy2Mz4
— 金子勝 (@masaru_kaneko) June 9, 2021
国が設置の大規模接種センター 東京と大阪で予約枠の8割残るガラ空き状態(フジテレビ系(FNN))#Yahooニュース
https://t.co/IOx2HJhrSs菅首相の「やってる感」演出のために、高齢者を引き回してるだけだよ。#大規模接種センター— 川上芳明 (@Only1Yori) June 8, 2021
ガース―のやってる感を演出するだけの茶番劇。肝心な現場での対応はどうした?
自衛隊の接種隊長を直撃!菅首相肝いりの大規模接種センターの予約ガラガラ問題【現場ルポ】 https://t.co/PfVOwKebiF @dot_asahi_pubより— たれうやや@反戦反核ふ那っ覇ー(梨) (@tareuyaya) June 10, 2021
このような“ガラガラ”状態を受けて、政府は東京・大手町の大規模接種センターに関して、12日からは電話による予約も受け付けることを決定。さらには高齢者以外、64歳以下の受け付けを開始する方針も固めたという。
全年齢に対象を広げることで、大規模接種センターの“ガラガラ”解消、さらには接種スピードのさらなる加速も狙ったものとされるが、ただ肝心の64歳以下の層からは「接種券が届いていないから予約できない…」との声が多数。ここでも、その対応のチグハグぶりが露呈する格好となっている。
大規模会場で電話予約始めるのはいいけど、接種券もってないと受けられないなら、日にちの予約できないよね?なんの受付をするんだろうか…
— TOMO (@tomo2_YC) June 10, 2021
思わず調べてしまいました!予約は始まるんですねー。でも接種券がないと予約できないので、始まってもすぐには予約できませんwww
私の住んでる区域は65歳以上の接種券配布と接種が始まったところのようで、優先度が低い人は来月以降みたいですよ。まだまだです♪— れいさ@庭師2年目&バレリーナ7年目&カメラは14年目 (@RaysaSodBallet) June 10, 2021
ワクチン接種券がねえと予約できないんか
ほんま券なくてもできるようにしてくれ— ゆーた(たくぼく) (@takuboku_aha) June 10, 2021
「接種が進む前に選挙したい」漏れ出る野党側の本音
高齢者に関しては「7月末までの接種完了」をかねてから公言している政府。その目標達成のため、地方自治体に対して国が「ものすごい圧力」をかけているといった話も、ここに来て漏れ伝わってる状況だ。
そんな政府の必死ぶりが垣間見れるのが、5月に政府が各自治体に対して行った「終了時期の見通し」の調査だ。一度目の調査では約86%の自治体が終えられるとの回答を得たが、政府は間に合わないと回答した251の自治体に対して個別で聞き取り。その翌週に改めて調査を行ったところ、「間に合わない」という自治体は125まで減ったと、21日に発表したのだ。
ところが、その5日後に発表された公明党による同様の調査では、248の自治体が「難しい」と回答したという。そのことを伝えた記事によると公明党は、政府がどの自治体が「難しい」と答えたのか情報を開示しなかったため、独自に調査したとのこと。ということは、先述の政府による「個別で聞き取り」は、自治体によってはある種の「圧力」と捉えられ、それが政府による2度目の調査に大いに反映された、といった見方も考えられそうだ。
接種スピードを速めて一刻でも早く集団免疫を得るというのが、コロナ禍から脱出するための王道なのはいうまでもない。ただ、それにしても政府が「7月末まで」の達成にここまで執着するのは、衆院選や自民党総裁選など大事な政治日程を控える菅総理が、コロナ対策に関する実績を1つでも作っておきたいため、という思惑が多分にあるのは言うまでもないだろう。
さらに、もう1つの目安とされているのが、「人口の4割前後が1回目接種を完了する」タイミング。海外諸国でのケースでは、そのタイミングで感染者数の押さえ込みが始まっているとされており、日本でも早ければ8月下旬にその水準に達するとの分析もあるという。
「高齢者へのワクチン接種完了」にくわえて「接種スピードのアップによって感染者数の抑え込みに成功」という“実績”が手に入れば、菅政権によるコロナ政策は一定の評価は得る形になりそう。そのことを野党側は大いに危惧しているようで、立憲民主党の議員からは「ワクチン接種が進む前に選挙をした方がいい」との本音も飛び出しているという。
今回のような多少のドタバタや「圧力批判」など気にせず、とにかく来たる選挙のためコロナ政策で実績をあげたい菅総理と、それを訝しむ野党勢力。いずれにせよ、そこには「国民のため」という目線は一切皆無のようだ。
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