携帯キャリア大手が揃って低価格プランをスタートさせたことで、大容量プランでの対抗が難しくなった格安スマホ事業者が活路を見い出したのは「繰り越し」プランのようです。UQモバイルに続きワイモバイルも余った容量を繰り越せるサービスをスタートさせると発表。ユーザーの支持は得られるのでしょうか?メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、小刻みな容量ごとに料金設定がされ、繰り越しもあるイオンモバイル利用者の動向から、「賢く節約したい」層が確実にいると分析しています。
UQモバイルに続き、ワイモバイルも「繰り越し」投入──賢く節約したい人に刺さる小・中容量プランに求められる機能
2021年6月7日、UQモバイルは新サービス説明会を開催した。6月10日からは新CMもスタート。UQモバイルとしてはブランド認知は進んでいるものの、まだまだユーザーには「MVNO」「格安スマホ」という認識が浸透していると言うことで、auのブランドの一つとして、品質や店頭サポート、通信料金の安さを改めて訴求していくようだ。
UQモバイルがすでに提供している新料金プランはデータ容量の「繰り越し」がワイモバイルのとの違いだったりした。しかし、6月9日、ソフトバンクはワイモバイルのデータ容量を翌月に繰り返せるサービスを今年8月にスタートさせると発表。UQモバイルの後追いをした。
実際のところ、UQモバイルやIIJmio、イオンモバイルといった事業者を使いこなしている人とすれば、こうした「繰り越し」が結構、刺さっているのかも知れない。すでに、メインブランドから離脱し、安価でコストパフォーマンスのいいブランドやMVNOにスイッチしている人は、毎月、賢く節約して使いながら、データ容量を余らせ、翌月に繰り越すというのを楽しく使いこなしている様子がうかがえる。
イオンモバイルに関しては、50万を超えるユーザーがいると言うが、毎月、マイページにアクセスしているユーザーが「2~2万5000人ほどいる」(イオンリテール株式会社 住居余暇本部 イオンモバイルユニット、イオンモバイル商品マネージャー・井原龍二氏)という。
また、「ユーザーが利用している容量と契約している容量プランの分布はだいたい一致している。ずれているところは4GB以下のプランのあたり。それ以上の容量のプランに関しては、おおよそユーザー側でうまく切り替えながら使っているのではないか」とのことだ。
イオンモバイルは20種類以上のデータ容量を提供しているが、ユーザーはかなり賢く、月の途中でも、自分がどれくらい使っているかを確認しながら、利用量をコントロールしているのかも知れない。小・中容量を売りとするブランドやMVNOとしては、こうした「賢く節約したい」というニーズを満たす、データ容量、さらには機能が必要なのだろう。
ブランドやMVNOとしては「5Gを提供して、大量にデータを消費して欲しい」というのが本音だが、むしろユーザーとしては5Gなんていらないから「そこそこの速度で、自分で使う量をコントロールしたい」という需要の方が高そうだ。
こうしたユーザーとすれば、iPhone 12の様々な通信を5G経由に流すというのは納得いかないだろうし、ハイレゾをセルラー通信で聞くなんて論外だろう。5Gスマホで、大量にデータを流すユーザーがいる一方で、限られたデータ容量をうまいこと使いこなせるユーザーも増えつつある。こうしたユーザーに支持してもらいつつ、いかにデータ利用量を増やしてもらうか。ブランドやMVNOにとっては結構、難しいハンドリングを迫られそうだ。
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