かつて私は、イタイ恋愛もたくさんしてきました。でもまったく後悔がないのは、それらを「失敗」にしていないから。
いまは結婚もしていますが、ここまでくるまでには、 相当な修行 (※イタイ目に遭うという意味で)をこなさなければならなかった…ということでもあるのですね。
だから失敗どころか「有難い経験の数々」といえると思っています。きょうはそんな 「イタイけど有難い経験」 のひとつをお話します。
違和感を抱えながら、過ごす日々
わたしより年下のその人とは、ある音楽の会で出会いました。この人自身、音楽をやっていて、大きなメディアには出ないもののコンサートも頻繁にやっていたり、その業界ではファンもついているようなまあまあ有名な人だったんです。
わたしも音楽は好きですが、どうも彼がやっている音楽は受け入れられず趣味・志向のところでの接点はなかったのですが「お互いにフリー」というところだけで接点がありました。
いま思えば、ただそれだけ。話もかみ合ってなかったし、お互いに共通項を見出すのにも大変。でもなぜか 「付き合ってほしい」 といわれた。きっとそれは、彼がそれだけ寂しかったから。そしてもれなく、わたし自身も寂しい思いをしていたから。
だから何気なしに付き合ってお互いの家に行ったりとかしたけど、一緒にいても全然かみ合わない。ベッドのなかにいるときもまったくダメ。性的にも相性は悪い。
ただ、彼自身が音楽家ということもあって、「叶えたい夢」なんかを語っているときには「そんな姿がいいなぁ、素敵だなぁ」と思って見ていました。
当時はどこかで、わたしも何か表現したかったけど、「わたしは違う」と思ってそれができないでいた。その思いを、彼の夢に一緒に乗っかることで昇華しようとしていたんですね。
まさかのプロポーズ!答えは…
そんな違和感を持ったまま、数週間一緒に時間を過ごしました。そしたらなんと急に 「結婚しよう!」 といわれたんです。結婚しようといわれて嬉しくない女性はいないかもしれませんが、このケースの場合、そんなこといわれても全然嬉しくない…。だって まったくかみ合ってなかったから。
どうやら、こんな「かみ合ってない感」はわたしだけだったようで、彼は何か運命を感じていた様子。こっちがこれだけトーンが低いのに、どこにどうやって運命を感じてくれるのかもわからないですが、彼はどこかで「夢」を見ちゃっていたんですね。
そこはさすが芸術家。わたしというリアルな人間を目の前に、頭のなかでは「理想」の恋愛、パートナーシップを繰り広げ、わたしはアバターか何かのように彼の理想の登場人物になっていて、実物よりいい風に「盛られて」彼の目に映っていたようです。
「結婚なんてまだ早いよ」「無理だよ」 と何度いっても聞き入れる様子がない。その理想と現実のギャップ、彼の妄想とわたしの現実のギャップに初めて気づいたとき、「あ、これは付き合っちゃいけないやつだ」と思いました。