東京五輪に参加する外国人選手に向けて、都内の観光名所を巡るバスツアー計画が浮上。大会組織委員会の橋本聖子会長も検討に入ったと伝えられ、大きな反響を呼んでいる。
記事によると、このバスツアーは選手村のある東京・晴海から出発し、東京スカイツリーや浅草の雷門、レインボーブリッジなど東京の観光名所を、感染防止対策のとられたバスの車内から眺めるというもの。
選手村の宿泊者は、新型コロナウイルス感染防止策で外部との接触が遮断され、選手が観光地などへと気ままに足を向けることは許されない状況。ただ、今回企画されているバスツアーなら、一般の人々と接触する機会はなく、問題ないと判断されているという。
「オンライン修学旅行」強いられる生徒にどう説明?
期間中ほぼカンヅメ状態になる選手たちに、ちょっとの息抜きぐらいいいじゃないか、といった意見も見られるこの報道だが、やはり大半を占めるのが、多くの国民が緊急事態宣言下で自粛を強いられるなか、また五輪だけが特別扱いなのかという声。とりわけ多いのが、修学旅行の中止を強いられている生徒たちに一体どう説明するんだ、という声である。
昨年から続くコロナ禍によって、全国各地の小・中学校や高校で中止が相次いでいる修学旅行。最近ではその代わりに「オンライン修学旅行」なるものが行われているようだが、その様子が結構「辛そう」だと、最近話題になったばかりだ。
オンライン修学旅行の画像本当に生徒たちが辛そう なぜカバンを持たせるのか… pic.twitter.com/oyDr2oT5oy
— okazsystem (@okazsystem) July 11, 2021
オンライン修学旅行の模様を取り上げたニュースによると、青森県のとある学校では、学校の体育館と京都を繋いだオンライン修学旅行が実施され、現地のバスガイドによる生中継や、動画配信で寺院を巡るなどして、旅行の雰囲気を味わったとのこと。どうやら、元々リアルな修学旅行を担当していた旅行代理店が、代替の企画として実施したもののようだ。
しかしネット上では、「オンラインなのに旅のしおりを持たされてる…」「ただの授業」「修学旅行の積立金がこれに全額取られるのだろうか」などと、逆に生徒たちにとっては辛い思い出となるのでは、といった意見が多くあがる事態に。実際、このオンライン修学旅行を体験した生徒からも不評の声は多く、なかには回線トラブルで中途半端に終わったとの報告もあがっている。
うちの学校もこれやったけどマジでなんか虚無だったし休んだら欠席扱いになるしでほんと酷い行事だったよ https://t.co/kHFzgWCSOh
— むすちゃん (@ms85sm) July 10, 2021
これやったんだけど名前も知らない底辺芸人と妙にテンションの高い中年男女が出てきてクッソつまらんかった https://t.co/kwPKOLjD9r
— 水簾 (@ha_MiTO1) July 10, 2021
こんなこと言ってしまったら、企画してくださった方々にとても失礼なのですが……
実際とてもつまらなかったです…
通信も悪くて何度も、何分も止まったりして、結局全ての内容を時間内に見ることが出来ずに終わりました。— ねえろ (@DDDrXO6Lidemb55) July 10, 2021
このように、全国で生徒たちがこのような辛い経験を強いられているなかで、今回のバスツアーのような「五輪優遇」の企画は、やはり理解しがたいという意見は多い。そもそも海外から来た選手たちは、果たしてそのような「おもてなし」を望んでいるのかという声もあり、ネット上の一部からは何かの利権絡みでの企画では、との訝しむ見方も浮上している始末だ。
五輪選手は #はとバスツアー
五輪選手は競技に来たんでしょう?子ども達は運動会も修学旅行も我慢でいるのに?どこまで特別扱い?それとも二階氏の観光業利権?
これは「おもてなし」ではなく「お人好し」。
— aquachan1997 (@aquachan1997) July 11, 2021
ツイッターの反応
今回のバスツアー企画にしても、どうも一般国民との感覚のズレが否めない五輪組織委だが、そのことを象徴するような話が他方でも様々あがって来ている。
現在、佳境を迎えつつある聖火リレーに関しては、伴走をする中学生に対して、アシックス製のウエア・靴・帽子を着用すること、また他社製のウエアなどを着用する際には、ロゴやブランドをテープで隠せ、との要請が出ていたことが、ツイッター上の暴露で発覚した。
中学校の教育現場からメッセージが届きました。「藤沢市で中学生に聖火ランナーの伴走をさせるため、市教委が教育総務課長とオリパラ開催準備室長との連名で、各校一人選出するよう依頼。アシックス社の製品を着用する(服・靴・帽子)こと、それ以外はロゴやブランドをテープで隠せと留意事項も」
— 大内裕和 (@ouchi_h) June 26, 2021
言うまでもなくアシックスは、今回の東京五輪におけるスポーツ用品部門唯一のゴールドパートナーである。そこまでスポンサーに気を使いたいなら、それ用に同社製のウエアでも用意しておくのが筋だと思うが、そのような大人の都合など一切関係ない中学生にその負担を強いている点に、批判の声が多く集まる事態となった。
さらに大会の運営を支えるボランティアに対しては、当日は自宅からユニホーム姿で通うように指示しているようで、そのことが多くの参加者を困惑させているという。
報道によると、組織委からは「会場に更衣室がない」「街に祝祭的な彩りを与えてほしい」との理由で、このユニフォーム通いを指示しているとのことだが、世間はそんなオリンピック開催の盛り上がりには到底程遠い雰囲気だというのは、言うまでもない話。それどころかボランティアからは、そんなウエアで歩いていたら「道中で嫌がらせを受けかねない」「石投げられるかも…」との危惧もあがったというが、それでも組織委は当初の指示を頑なに変えないようである。
これまでの度重なるゴタゴタで、日本国民の五輪に対する視線が相当に厳しいものになり、少なくとも以前までの誰もが諸手を上げて歓迎といった雰囲気は全く消え失せている感もある今回の東京五輪。それにも関わらず、相も変わらず「五輪は特別なものである」という意識を抱き続け、あまつさえ「五輪遂行のためなら一般市民は犠牲を厭わないだろう」といった、国民を舐め切った見通しまで持っているようにも見受けられる組織委に対し、不信がさらに募るのは無理のないことだろう。
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