携帯代が毎月2282円下がった?総務省発表の数字は信用できるのか

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先日掲載の「お手柄アピール?武田大臣『携帯値下げで総額1兆円おトク』の嘘八百」で、総務省が発表した「年間4,300億円負担減、将来見込みとして1兆円減」という携帯・スマホ料金値下げによる効果について、「盛っているのでは」との疑問を記したケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。その数字はやはり「額面通り」に受け取るには疑問が残るもののようです。石川さんは今回、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、上記2つの額が利用者アンケートを元に算出されていたことを明らかにするとともに、根拠となったアンケートの内容を精査。その上で、「本当に実態を反映した正しい数値といえるのか」との疑念を呈しています。

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値下げで年間4,300億円。国民負担軽減の根拠が明らかに――総務省のお得意なアンケートで乗り換え動向を推定

先週のメルマガで総務省が6月29日に、主要な携帯電話事業者10社が今春、投入した新料金プランの契約者数が5月末時点で1,570万件となり、年間4,300億円の国民負担の軽減につながったという試算を発表したと報じた。これに対して「KDDIとソフトバンクは年間6~700億円の収益減にも関わらず、計算は合うのか」と突っ込ませてもらった。

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先週の段階で、この根拠に関する資料は記者クラブにのみ配布されただけだった(知り合いの記者に見せてもらったが、詳細を世間に公表するのは遠慮しておいた)。

7月9日になって、総務省は競争ルールの検証に関するWG(第22回)を開催。記者クラブにのみ配布されていた資料が公開された。

この4,300億円の根拠だが、総務省が6月に実施した利用者アンケートを元に算出されているという。すでに各社の新料金プランに乗り換えたユーザーを対象に乗り換え元と乗り換え先を調査し、全体が100となる表を作成。契約者数である1,570万件を、どこからどこへ乗り換えたのかを割り振り、旧プランから新料金プランでどれだけ値下げにつながったのかを計算したという。

その結果が4,300億円であり、さらに「今後、乗り換えたいと考えている」という12.8%を計算に入れると、武田良太総務大臣がぶち上げた「1兆円規模」になるという。

資料を見せてもらったときの第一印象としては「また、アンケートか」という落胆でしかない。総務省は困ったときにはアンケートを実施し、資料を作ってくるのだから、本当にやっかいだ。

2019年に2年間の契約解除料を1,000円に値下げするという施策を決める時にも、総務省はユーザーアンケートを実施して「1,000円以下が望ましい」という無理矢理な論法を持ち出してきた。今回も、各キャリアやMVNOに算出させたものではなく、あくまでアンケートの数値を元に勝手に試算しただけに過ぎない。

そもそも、このアンケートを見ると、NTTドコモを乗り換え元としている人が全体の23.2%であり、楽天モバイルが17.2%となっている。この数字を見るだけで、実態を反映していないのがよくわかる。

全体的に見ると、3キャリアの割合が13%減り、一方で楽天モバイル15.7%、シェアが上がったということになる。つまり、1,570万件の15.7%なので、246万件が楽天モバイルに加入したという計算が導き出される。

確かに楽天モバイルの直近の契約数は410万件であり、「もうすぐ500万件に届く」(楽天モバイル関係者)とのことで246万件はあながち間違っていないのかも知れない。

しかし、いまの楽天モバイルの契約者を見る限り、メイン回線を乗り換えているというよりもサブ回線やMVNOからの乗り換えが中心ではないか。

4,300億円を1,570万人で割り、さらに12ヶ月で割ると、2,282円となる。ユーザー一人あたり、毎月2,282円、下がった計算になるのだが、本当に実態を反映した正しい数値といえるのだろうか。

携帯電話料金の低廉化に向けた二大臣会合について(総務省)

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