規模の大小を問わず、組織にとって重要なもののひとつとして挙げられるのが「一体感」ではないでしょうか。しかしながら、多くの管理職が職場の一体感の醸成に頭を悩ませているのも事実です。そんな難問を解決してくださるのは、『管理職1年目の教科書』などの著書があり、日本と米国、両方の企業でのマネジメント経験をもとに、多くの企業の人材開発に携わっている櫻田毅さん。櫻田さんは今年3月に創刊のメルマガ『『櫻田毅の人材価値向上講座』~「仕事をこなす人」から「仕事ができる人」への成長読本』で今回、一体感づくりの極めて効果的な方法をレクチャーしています。
チームの一体感をつくるのに役立つシンプルな方法
研修の場で、管理職クラスの方がよく口にされる問題意識です。
- 正社員、非正規社員、アルバイトなど多様な雇用形態の人がいる
- 年上の部下から新入社員まで世代の幅が広い
- 仕事に対する個人の価値観が多様化してきている
それぞれの職場の状況をあげながら、それでもチームの気持ちを1つにして、目標に向かっていきたいという強い想いが感じられます。
受講者同士で議論していただくと、次のような対応案が出てきます。
- 繰り返しチームのミッションを説明する
- 我々の仕事の社会的な意義を理解してもらう
- なぜ、あなたが必要なのかを理解してもらう
- 一人ひとりの話を聞きながらも、役割の重要性を説明する
- 感謝の言葉を伝えることで「必要な人である」ことをわかってもらう
- 協力し合うことが自分にもプラスになることをわかってもらう
- チームで結果を出すことで「やってよかった」と感じてもらう
どれも、第一線の現場を預かる人たちの生の声です。
職場の状況は千差万別であるため実態に応じたやり方の工夫が必要ですが、実は、一体感づくりの最初のきっかけとして、極めて効果的な方法があります。
「同じ問題を一緒に考える」
それは「同じ問題を一緒に考える」ということです。
たとえば、「この案件はどう進めるのがよいのか?」という問いをメンバーに投げかけて一緒に考えるのです。
または、放置されている課題に対して、「どのように解決すればよいだろうか?」という問いをメンバーに投げかけて一緒に考えるのです。
自分が決めて一方的に指示するのでなく、あるいは、メンバーに丸投げするのでもなく、解決に向けて自分とメンバーで一緒に考えようとするのです。
簡単すぎてすぐに答えが出るものではなく、逆に、難しすぎて頭を抱えてしまうものでもない。ほどよく頭を使って一緒に議論をしながら、少し時間をかけることで結論が出るようなものが適しています。
なぜ、「一緒に考える」ことで一体感が生まれるのかというと、人の心には「行動が感情に影響を与える」という仕組みがあるからです。
あなたにも、このような経験はないでしょうか?
散らかっている部屋の片付けをしなければならないのに、やる気が出ないとき。それでも、「少しだけでも」とやり始めると、気がついたら次々と片付けていたとか。
「片付ける」という行動を起こすことによって、「やる気」という感情が誘発されたのです。やる気があるから片付けができるのではなく、片付けているうちにやる気が出てくるのです。
人と人との関係においても行動が感情に影響を与えます。
バーベキュー・パーティで、初対面の人と一緒に買い物に行ったり、一緒に野菜を洗ったり、一緒にテントを立てたり、一緒に具材を串に刺したりしていると、準備が終わる頃には相手との間にちょっとだけ一体感や親近感を覚えていたりします。
別に、仕事やプライベートの深い話をしなくても、一緒に準備をしたという行動が一体感という感情を誘発するのです。一体感があるから一緒に準備できるのではなく、一緒に準備していると一体感が生まれてくるのです。
これら同じように、同じ問題を一緒に考えるという「行動」を共にすることで、一体感という「感情」が誘発されてくるのです。