文氏来日で日韓駆け引き 首脳会談位置付けめぐり

2021.07.11
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by 時事通信


先進7カ国首脳会議(G7サミット)出席のため英国に到着した韓国の文在寅大統領=6月11日、英コーンウォール(AFP時事)

先進7カ国首脳会議(G7サミット)出席のため英国に到着した韓国の文在寅大統領=6月11日、英コーンウォール(AFP時事)

  • 先進7カ国首脳会議(G7サミット)の2日目の討議。右端が菅義偉首相、左から4人目が韓国の文在寅大統領=6月12日、英コーンウォール(AFP時事)

 東京五輪に合わせた韓国の文在寅大統領来日をめぐり日韓の駆け引きが続いている。日本側は首相との会談を行う構えだが、あくまで儀礼的な場という位置付け。韓国側は両国の懸案について議論する本格的な会談を求めており、直前まで調整が続きそうだ。
 韓国紙によると、文氏は開幕日の23日の訪日を検討しているという。首相は8日の記者会見で「訪日される場合は外交上丁寧に対応することは当然だ」と語った。五輪ホスト国として各国首脳を平等に扱う必要があると判断したとみられる。
 日韓関係は徴用工や慰安婦の問題を抱え、冷え切ったまま。韓国側が実効性のある措置を取るまでは、首脳会談に応じること自体が不作為を容認するものと受け取られ、懸案解決をむしろ遠のかせるという考えも日本側にある。
 首相は6月に英国で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の際、初対面の文氏と「あいさつ」を交わすのにとどめた。今月8日の会見でも「懸案に韓国が責任を持って対応することが重要だ」と改めてくぎを刺した。
 五輪期間中はフランスのマクロン大統領をはじめ2桁に上る外国首脳が来日する見通し。首相が1人15~20分程度の会談を次々にこなすパターンを検討しており、文氏もその一つとするのが日本側の想定だ。外務省幹部は「本格会談には応じられないが、短時間なら可能」と指摘。懸案に踏み込まない方針も明らかにした。
 一方、韓国大統領府高官は7日、同国メディアの取材に、五輪開催国の日本が本格的な会談を提案するのが筋だとの立場を強調。「日本はもう少しオープンに問題を解決する姿勢で臨んでほしい」と主張した。
 G7サミット直後には韓国側で、略式の首脳会談実施で暫定合意していたものの日本側が一方的に取り消したとする韓国当局者の話が報じられ、日本政府は否定した。文政権は対日関係の立て直しを図るスタンスを示しておきたいが、「低姿勢」だと国内で批判される事態は避けたいようで、神経戦の様相も見せる。
 日韓首脳の正式会談は2019年12月が最後。文氏は来年5月の任期満了まで1年を切り、求心力低下が目立つ。五輪開催時の会談が実現しても、両国の本質的な関係改善にはつながりそうもない。(2021/07/11-07:35)

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