海外メディア、「熱狂」どう伝える? 無観客五輪で目算狂う

2021.07.13
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by 時事通信


リック・バートン 米シラキュース大教授(同大ホームページより)

リック・バートン 米シラキュース大教授(同大ホームページより)

 【ワシントン時事】東京五輪が主要会場で無観客開催となったことは、大会を放送する海外のメディアにとって誤算となった。観衆の声援というスポーツ中継の重要な要素がなくなり、視聴率の低下が懸念されるためだ。専門家は「熱狂」を伝える演出上の工夫が不可欠だと指摘する。
 米国で独占放映権を持つNBCテレビは無観客開催の決定を受けた声明で「がっかりしている」と率直に述べた。
 NBCは前回リオデジャネイロ五輪を上回る最高益を期待し、史上最多の7000時間超の放送を行うと発表している。欧州でもディスカバリー社が前例のない最大4000時間の放送を計画。だが、メディア関係者の間では、観客の不在が「競技に不気味な雰囲気を与えかねない」(米CNNテレビ)として視聴率の低下を予測する見方がくすぶる。
 米国オリンピック委員会の元最高マーケティング責任者でシラキュース大のリック・バートン教授は取材に対し、演出の工夫が鍵を握ると指摘。「観客がいないことを実感させず、視聴者にその場にいるかのような感覚を持たせる映像作りが必要で、放送局にとっては試練となる」と説いた。
 NBCは「われわれには新型コロナウイルス禍で無観客のスポーツを放送してきた経験がある」と万全の対応を強調。今回、選手の友人や家族の自宅などでカメラを回し、喜びや落胆の表情を中継する取り組みを新たに導入する方針だ。
 また米プロスポーツ界では、無観客の競技で臨場感を出すためにファンの歓声を人工的に放送に取り入れる試みがコロナ禍で定着。今回の五輪中継でも各国で使われる可能性がある。
 バートン教授は「無観客開催は日本にとって痛ましいことだが、そのこと自体が五輪の商業的価値を減ずることはない」と指摘。「これまでと同様の高い視聴率を取れるのではないかと期待している」と語った。(2021/07/13-07:27)

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