東京都への4度目の緊急事態宣言発出に際し、飲食店による酒類提供禁止を徹底させようと、取引金融機関からの働きかけや酒類卸売業者に取引停止を依頼するなど、耳を疑う方針を打ち出した内閣官房。批判噴出で結局両案とも撤回したものの「取り返しなどつかない」と怒りを表すのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。前回記事「飲食業者への配慮は皆無。ワクチン『職域接種』で崩壊した公平性」での指摘が霞むほどの「脅迫」の手口は、反社会的組織のそれと大差ないと断じています。
言い方とやり方のこと
4度目の緊急事態宣言を前に2つのことが発表された。
- 休業要請に従わない飲食店との酒類の取引停止を卸売業者に依頼する。
- 休業要請に従わない飲食店の情報を取引金融機関に公表する。
「駟も舌に及ばず」
後から何を言ったってどうにもならない。少なくとも政治とはそういう厳しい世界の筈だ。その時の思いつきや気分で話されてはこちらとしては堪ったものではない。
先に挙げた両項などは「つい、うっかり」の言い間違いの類ではない。両方とも施策の体裁をとっているからだ。ということは、政府は本気でこう考えている(あるいは考えていた)ということである。理不尽な話である。以下のように言い換えればそれがより分かり易かろう。
- 飲食店の供給源を断ち
- 飲食店の資金源を断つ
「麻薬戦争でもやっているつもりか!」と思わず突っ込みたくなるのは自分だけだろうか。
コロナ禍における緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置で一番傷ついた人を一番痛めつける。一体この国の政府は何がやりたいのだろうか。そんなに酒が問題なら1930年代のアメリカのように禁酒法でも定めればいい。いやむしろそれくらいまでしなければ前述の2つの施策は合理性を著しく欠いた政府による悪質な脅しとしか言いようがない。
改めて言うまでもなく、飲食店関係者は別に禁制品を扱っている訳ではないし、反社会的な存在でもない。我々と同じ、善良な納税者である。故にその生命と財産は日本国政府により等しく守られなければならない。
仮に今回のコロナのように一部の人たちの生業が公共の利益と相反するようなことがたまたま生じた場合は、その権利の一部(あるいは全部)を制限する代わりに当然これを必要十分に補償するべきなのである。重要なのは必要十分(金額的にもタイミング的にも)というところである。4月に出した申請が今になっても振り込まれないような助成金など何の意味もない。
大体一般常識から見てもまず助成金からであろう。行政府を構成する政治家や役人には、家賃・水道光熱費・通信費そして人件費といった、所謂固定費というものに対する感覚が絶望的にない。自分たちが気にしたことがないからだろう。それでもって「助成」と名がつけば、何でもかんでも後払い方式だからとにかく遅い。干乾びて死んだ人にいくら水を飲ませても何にもならない。
そして何よりも不愉快なのは「お願いベース」から「脅迫ベース」にいきなりその態度が変わったことである。正直、手口としてはそこらの反社会的組織と大して差はないように思うのは自分だけだろうか。我々はこの政府に税金を預けている訳である。ある意味、何とも恐ろしい話ではないか。
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