米ロ首脳会談は成果ゼロとの報道がされているが、本当にそうだろうか。今後、ロシアの存在感は今まで以上に高まることは間違いなさそうだ。これと同盟国である中国の動きと連動し、アメリカの影響圏には入らない国際秩序の形成が進むかもしれない。これは日本にも大きな影響がある。北方領土や北海道の東部と北部が狙われている。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2021年7月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
米ロ首脳会談は成果ゼロか
米ロ首脳会談から垣間見られるロシアの勢力拡大と、アメリカの覇権退潮の動きについて解説したい。
すでに半月ほど前の話だが、6月17日、スイスのジュネーブで、ロシアのプーチン大統領とアメリカのバイデン大統領との首脳会談が行われた。会談の目的は、冷戦後最悪とされる関係を修復し、予測可能で安定した関係を構築するためである。
しかし会談では成果はほとんどなく、合意された具体的な内容はなかった。日本や欧米の主要メディアでは、これはいわば顔見せの会談でしかなかったという報道が一般的だ。
サイバー攻撃をめぐる米ロの牽制合戦
そうしたなかでも注目されたのが、バイデン大統領がロシアによるサイバー攻撃から「オフ・リミット」とすべきアメリカ国内の「決定的に重要なインフラ」として、16分野を明示したことだ。
それらは、エネルギー、水道、保健、非常体制、化学、原子力、通信、政府機関、国防、食糧、商業施設、IT、交通、ダム、製造・生産施設、金融サービスである。
バイデン大統領は、これらインフラ分野のサイバー・セキュリティに関し、双方で何らかの秩序をもたらすための取り決めができないかどうか、今後、話し合うことになるだろうとしている。
また大統領は、「今後、ロシア側からサイバー攻撃を受けた場合、軍事的報復はあり得るのか?」との質問に対し、「自分から軍事的威嚇のようなことは言わなかった。明快なわが方の主張をした」と答えた。
ロシアの勢力拡大を容認したかのような会談
このような報道を見ると、今回の米ロ首脳会談には具体的な成果がなく、今後も話し合いを続けることを確認しあっただけの空疎なものだったという印象を受けたとしても当然だろう。
だが、この首脳会談の意味を、会談の前後で起こっていた一連の出来事を文脈として読み取ると、まったく違った内容が見えてくる。
バイデン政権は、ロシアの勢力拡大には目をつぶり、強硬な対抗策は取らないというメッセージである。これがどういうことなのか見るために、近年の緊張した米ロ関係の推移を簡単に振り返って見よう。
2013年頃までは、ロシアはG8の一員でもあり、アメリカを中心とした欧米とは、比較的に良好な関係だった。しかし、次の2つの歴史的な出来事が引き金となり、ロシアと欧米との緊張した関係が始まった。
1)2014年4月 ロシアによるクリミア半島の併合
2)2015年9月 ロシア、シリアのアサド政権を軍事的に支援
この後、2016年には、特にアメリカとロシアの関係はそれこそ第3次世界大戦の可能性さえささやかれるほど緊張した。
これがどの程度の緊張であったのか見るために、2016年で米ロ関係が最悪の水準になった6月から10月までの動きを見てみよう。