日本にいると比較的に明るいアメリカのニュースばかりが目に入ってくるが、実態はかなり深刻だ。高いインフレ率と犯罪率で多くの一般市民が不安を抱えている。そんな中、トランプと支持者たちが勢いを取り戻しはじめている。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2021年7月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
アメリカの明るいニュースばかりが流れてくる
一向に分断が解消される兆しのない、この夏のアメリカの風景について解説したい。
2022年から始まる次期大統領選挙は、トランプが勝利した2016年の再来になるかもしれない。少なくともそのような予兆はある。
日本にいると、比較的に明るいアメリカのニュースばかりが目に入ってくる。南部を中心にワクチン接種に拒否反応がある地域はあるものの、60%近い国民が接種を行い、全米で行動規制が大幅に緩和されている。バーやレストラン、そしてコンサートやスポーツイベントには多くの人が集まり、コロナ前の2019年頃の状況を彷彿とさせる光景が日常になりつつある。
これを反映して個人消費もプラス7.0ポイントと強く、それにけん引された成長率もプラス6.4%とすこぶる好調だ。長いコロナのパンデミックの期間がやっと終わり、戻ってきた普段の夏の季節を満喫しているというのが、日本の報道から感じられるアメリカ国内の状況である。
いまだに強い行動規制が迫られている多くの日本の地域とは対照的だ。
現状は霧の中?筆者の友人からのメッセージ
そんなとき、筆者が親しくしている複数のアメリカ人の友人からほぼ同時に連絡があった。1人は、アメリカ西海岸在住の友人で、小学校の同級生である。実は筆者は帰国子女で、小学校はアメリカであった。約10年ほど前になるが、当時の小学校のクラスメート数名がフェースブックで筆者を発見し、旧交を温めるようになった。そのうちの1人からおおよそ次のようなメッセージを受け取った。
「家を新築する計画があったのでお金を貯めていたが、購入は諦めざるを得ない状況になった。住宅価格の高騰が続いている。もはや手が出る水準ではなくなった。また、国民の分断と相互の憎しみは激しく、暴力事件が激増している。信じられないくらいだ。将来この国があるのかどうかさえ疑問だ。森の中にこもって、隠遁したい気分だ」。
このように言ってきた。また筆者には日本に在住し、アメリカと頻繁に行き来をしている友人が2人いる。彼らからも連絡があった。彼らとの付き合いも30年くらいになる。2人ともおおよそ次のようなことを言っている。
「今後アメリカという国がどうなってしまうのかまったく分からない。いまあの国に帰りたいとは思わない。あと1年待つが、状況が好転し安全に暮らせるという確信がなければ、国籍を日本に変えることを真剣に検討するつもりだ。いまのとろこ、日本の方がはるかに安全に暮らせる」。
このような内容のメッセージだった。彼らは50代から60代で、きちんとしたキャリアを持つ人物だ。特に政治に対して関心が強いわけではなく、トランプやバイデンの熱心な支持者ではない。比較的にノンポリの平均的なアメリカ人だ。
もちろん彼らは筆者の個人的な友人だ。これらの意見を一般化するわけには行かないが、自分の国に住み続けることに大きな不安を感じるというのは尋常ではない。彼らとの付き合いは永いが、そのようなことを言ったことは一度もなかった。2020年の大統領選挙と「BLM運動」の高まり、そして新型コロナのパンデミックでアメリカが混乱した状況でも、早くこの混乱が落ち着き正常な日常に戻ることを切に願っていた人達だ。
そのような人達が、自分の国に住むことに大きな不安を持つということは、彼らがアメリカという国に見切りをつけ始めたことでもある。彼らに自分たちと同じような意見を持つ同世代の友人がいるかどうか聞いてみたところ、大勢いるとのことだった。アメリカの将来に希望を持っている人々は、むしと少数派ではないのかということだった。