感染者ゼロの嘘。北朝鮮がコロナワクチンのモニタリングに応じぬ訳

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国の体面保持のため国民が犠牲になる北朝鮮の図式は、新型コロナを前にしても変わらないようです。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんが、同国へのコロナワクチン供給が遅れている真の理由をリーク。加えて、金正恩政権が中国との国境封鎖を続けるウラ事情も暴露しています。

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北朝鮮に「新型コロナ感染者は本当にいないのか?」の議論は無駄

知り合いからのメッセージ。「東京オリンピックがもうすぐ開催するが、韓国は東京オリンピック開催に反対しておきながら、いざ開催が近くなると今度は日本に恩着せがましく参加を表明し、選手村の韓国選手が入る棟には、太極旗と李舜臣将軍の戦意(敵意)を鼓舞する文句の垂れ幕を掲げた。これはほどなくして外されたが、いつものことながら大人気がない、と言うか常識がない。選手村の食堂では福島産の食材は食べずに、自らが選手に食事を配給するというから、見上げたものである。いつだったか、日本で開催された国際スポーツ大会で、確か『キムチがなかったので、実力を発揮できなかった』というようなことを言われたことがあったが、今度は自らが配給した唐辛子とニンニクの効いたキムチの香りが選手村を席捲するだろ」と。

その彼はさらに「それに比べ、北朝鮮の金正恩総書記ははっきりしている。コロナ感染が蔓延している日本に、我が国の良民を派遣するわけにはいかないので、東京オリンピックには参加しないときっぱり言ってきた。なかなかやるじゃないか」とも言ってきたが、「御説ごもっともです」とは言えなかった。

北朝鮮が東京オリンピックに参加しない表面上のごもっともな理由は、知人の言う通りであるが、それはあくまでも表面的な理由である。確かに、金正恩総書記は今年2月8日に開催された朝鮮労働党の中央委員会総会の演説で「新型コロナウイルスの防疫措置が続く中でも、経済建設を進める」と言って、国内に新型コロナ感染者がゼロであることを強調した。しかし、この演説からほどなく5月31日に閉幕した世界保健機構(WHO)年次総会の中で、途上国への新型コロナウイルスワクチンの供給について「一部国家が必要以上に確保し、不公平な事態を招いていると」と批判する声明を発表した。

北朝鮮はワクチンを共同購入して途上国にも分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、5月までに約170万回分のワクチン供給を受ける予定になっていたが、遅れが生じていた。

北朝鮮はWHOに対し「差別なく治療が受けられる公正な世界を実現するよう努力を傾けるべきだ」と、もっともらしく言い放ったが、実際にはアストラゼネカ製に難色を示し、他社製に換えられるか打診したばかりでなく、コバックスの要員の入国を事実上拒否したために、ワクチンの供給のめどがつかなくなったのである。つまり、北朝鮮は接種状況のモニタリングに難色を示したのであるが、モニタリングを通じて北朝鮮の感染状況が透明化され、「感染者ゼロ」報告が虚偽報告と発覚する恐れがあるからだ。

さらには朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』は、「ウイルスが変異を続け、ワクチン接種している国でも目立った効果を得られずにいる」などと伝え、副反応で死者が出ているとも報じ、コロナ禍の長期化は「不可避の現実」と強調している。

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