貧困層はワクチン接種にしても、生活に追われて時間と手間かける余裕がなく、どうしても後回しか、打たない選択になってしまう。結果的に「貧困層=ワクチン接種が低い」という図式が浮上してきたのは憂慮すべきことだ。日本でも「貧困者がワクチン接種していない」という状況に陥る可能性がある。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
「貧困層ほどワクチン接種率が低い」という現状が見えてくる
コロナワクチンに対する評価、良し悪し、打つ打たない、主義主張はすべて脇に置いて現在、少しずつ見えてきている現状を確認すると、ある状況が垣間見えてくるようになった。その現状とは、以下のものだ。
「貧困層ほどワクチン接種率が低い」
世界を俯瞰して見てもそうだ。ワクチン接種が進んでいるのは先進国である。ワクチン接種が進んでいないのは途上国である。
先進国では急激にワクチン接種が進み、人々はコロナによる感染と重症化を避けることができるようになり、経済を再開させることができるようになり、経済もどんどん上向きになっていこうとしている。
しかし、多くの途上国ではワクチン接種が滞り、人々は今もなおコロナ禍による感染の拡大と重症化に混乱し、経済を再開させるどころかロックダウンに見舞われて、経済的にも萎縮せざるを得ない状況に追いやられている。
「低所得層・貧困層」を多く抱える途上国でワクチン接種率が低いという現状は今後もさらに鮮明化していくことになるだろう。
では先進国であれば「低所得層・貧困層のワクチン接種率が低い」という現状が関係ないのかと言えば、まったくそうではない。
先進国でも、もちろんワクチン接種を全員が済ませているわけではないのだが、実はここでも興味深い事実が垣間見えるようになりつつある。アメリカでも「貧困層ほどワクチン接種率が低い」が明らかになりつつある。
ワクチン接種は無料なのに社会の底辺になればなるほど打たない
フォーブズ紙では『米ワクチン接種、貧困層多い州ほど低迷 普及に経済格差の壁』という記事でそれを報じている。
この報道によると、『住民の貧困率が高かったり世帯所得が低い州ほど、新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種率も低い傾向にある』ということで、その原因を「政治信条」と「経済格差の問題」であると書いている。
接種率が低い7州は貧困率の上位10州に含まれ、アメリカでワクチン接種率が最も低いミシシッピ州は、アメリカで最も貧困率が高い州でもあった。逆に、ワクチン接種率が最も高い上位10州は、いずれもおおむね世帯所得が高い州であったという。
所得が低い州=ワクチン接種が低い
貧困率の高い世帯=ワクチン接種が低い
フォーブズは批判を恐れて踏み込んだ事情を書かず、「学歴、支持政党、性別はいずれも関係している」とだけ述べているのだが、恐らく「低学歴・共和党・女性」の接種率が低いと言いたいのではないか。
さらに、最後には「人種」についても構造的な格差が絡んでいると、ここでもぼかしているのだが、いったいどの人種でワクチン接種が低いのだろうか。これについては『JBpress紙』が明確に「黒人」であると記事に指し示している。
この記事の副題は「無料なのに桁違いに少ない黒人接種率、背景にある社会問題」となっている。
ワクチンは無料であり「金がないから打てない」というわけでもないのだ。誰でも平等にワクチン接種ができる環境になっている。にも関わらず黒人が打ちに行かない。それも、貧困にある黒人であればあるほど打たない。