東京五輪と緊急事態のコンボが招く「宣言無力化」と感染大爆発

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始まってみれば日本代表選手たちの活躍に沸く東京2020オリンピック。首都圏の会場は無観客開催になっていても、テレビから伝わってくるのは、世界最大級のスポーツのお祭りが東京で開催されているという事実です。これでは緊急事態宣言など無力無価値で、人流増大とデルタ株の感染拡大は免れないと呆れるのは、コロナ以前から東京五輪に反対を表明していたメルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。復興を妨げた「復興五輪」であり、感染抑止を妨げる「コロナに打ち勝つ五輪」の矛盾を指摘し、改めて五輪の意義を問いかけています。

緊急事態宣言のこと

私はずっと東京オリンピックの開催には反対の立場を取って来た。しかもそれはコロナ以前からのことである。その理由を簡単に言うと、まず今の東京のような一極集中型巨大首都での大会運営においては相当規模の社会的・経済的弊害が反作用的に出るということである。オリンピック開催中のさまざまな規制がそれである。忙わしく働く人にしてみれば全くもっていい迷惑で、半ば強制的に協力させられているようなものである。

もう一つは東北復興と言いながらもその実復興の妨げとなってしまうことである。オリンピックの会場等整備のために東京に建築資材と貴重な現場労働者が集中すればその反動として当然東北の復興は遅れることになる。ここ数年で最も様変わりした都市はどこか?他でもない、東京である。これが、例えば仙台・東北オリンピックとかだったら大賛成であった。

そこへ加えてのコロナである。賛成できる筈がない。しかもあろうことか、緊急事態宣言下の開催である。全くどうかしているとしか言いようがない。「緊急事態宣言下であっても世界最大級のスポーツの祭典は開催される」。この現実は、多くの人に「なら大抵のことはやっても大丈夫」と解釈することを許したに違いない。事実その結果として7月22日からの連休では全国的に人流が急増した。一年半もの長きに亘って外出自粛のストレス下にあった者にとっては格好の免罪符となってしまったという次第である。

しかも今回の緊急事態宣言とオリンピックのコンボにより「緊急事態宣言」というもの自体が実質的に無価値となってしまった。「私たちは祭りをするからあなたたちは家から出ないで下さい」。いくら何でもこんな出鱈目なお願いが通用する筈もない。言うまでもなく「私たちは祭りをしたけれどもあなたたちは今後も何もしないで下さい」も無理筋のお願いである。今後は今までと同じような「緊急事態宣言」で今までと同じような効果は期待できないことであろう。

今にしてみれば、訪日五輪関係者を移動式のバブルで包むよりは日本国民の方を固定式の巨大バブルで包んだ方が余程ましだったかもしれない。特別給付金を出して「オリンピック期間中は外出をしないで下さい」とアナウンスした方が全体としては今後の対策という意味においても良かったのではないだろうか。

対デルタ株に関して我々の武器は今はおそらくワクチンだけであろう。これだけで本当に大丈夫か。緊急事態宣言が有名無実化してしまった以上、守備力(集団的な守備力)は限りなくゼロに近くなってしまった。歴史を見ても分かる通り、制御の利かなくなった日本人ほど恐ろしいものはない。「ええじゃないか」状態にならぬことを祈るばかりである。この夏、我々にとって大切なのは、熱よりも冷静さなのである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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