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PayPay詐欺で逮捕者、孫正義氏はどう対応するのか?「確認不足の店主が悪い」との声も。補償ナシなら手数料有料化のタイミングで加盟店激減か

電子決済サービス「PayPay」のアプリを悪用した詐欺事件が発覚し、大きな話題となっている。

報道によると、逮捕された30代の男は埼玉県三郷市内のディスカウントショップで、あらかじめ用意していた「決済音」を店員に聞かせて支払ったように見せかけ、食料品などおよそ8,200円相当をだまし取っていたとのこと。

店側は決済終了の画面までは確認せず、見せかけの「決済音」で支払いがされたと信用していましたが、逮捕された男が店を訪れるたびに、その日の売上額の計算があわないことが相次いだため、警察に相談したところ、今回の犯行が発覚したという。男は「金に困ってやった」と容疑を認めており、警察は同様の犯行を繰り返していたとみて、調べを進めているという。

店側の確認不足は「重大な過失」になる?

PayPayユーザーならお馴染みの「決済音」で騙すという、手口としてはいたって単純な今回の詐欺事件。

当然ながら、詐欺を働き逮捕された30代の男が誰よりも悪いのは言うまでもないが、ネット上では「確認不足の店主が悪い」と、迂闊だった店側を責める声も。いっぽうで、こういった単純すぎる手口の詐欺が通じてしまうようなPayPay側のシステムに問題があるのでは、といった声もあがるなど、様々な見解が飛び交う事態となっている。

PayPayを含めたQR決済の方法には、コンビニ等で導入されているPOSレジから客側のスマホにあるバーコードをスキャンする方法や、店側が用意したスマホで客側のバーコードをスキャンする方法などがある。ただ先述の記事をよく読んでみると、どうやら詐欺に遭った店では、店側が用意したバーコードを客がスマホでスキャンし、客自らが購入額を入力して決済するという、いつも利用されている方ならお分かりだと思うが、客側からすれば一番面倒くさい方法を採用していた模様だ。

この場合、店側は決済が完了したかどうかをその場で確認するためには、客側のスマホ画面をチェックするしかないが、レジに多くの客が並んでいるなど忙しい時間帯には、それもままならないのも想像に難くなく、今回のような詐欺行為が起こってしまうのも、ある意味で時間の問題だったとも言えなくもない。

いっぽうで気になるのが、こういったケースの際に店側は略取された代金の補償は受けられるのかという点だ。PayPayの加盟店向けのサイトを見てみると、不正利用時の補償に関して「PayPayでの決済において、悪意ある者による不正取引が行われた場合でも、原則加盟店に取引金額の全額を入金します」との記載があるが、それとともに但し書きとして「加盟店側に故意または重大な過失などがあった場合は、入金しない場合および負担を求める場合があります」とも書かれている。

今回のケースは、店側の確認不足もひとつの原因として指摘されているため、それが「故意または重大な過失」とされる可能性も大いにありえそう。ただ、実際のところPayPay側としては、今秋に実施されると目されている「手数料有料化」を控えて、タイミング的に強くは出られないのでは……といった推測も、ここに来て浮上している状況だ。

PayPayに迫る「手数料有料化」のタイミング

PayPayといえば、数あるQR決済サービスの中では後発組だったものの、2018年末から数度に渡って展開された「総額100億円あげちゃうキャンペーン」によって、QR決済の知名度を一気にアップさせるとともに、自らのシェア拡大にも成功。その原資を担った孫正義氏率いるソフトバンクグループは、PayPayを自社サービスへと流入させる入口と捉えていたようで、過去に街中の至る所でYahoo!BBのモデムを配っていたのを思い出させる、豊富な資金力にものをいわせた「バラマキ作戦」で、QR決済サービス界の覇権を握ることに成功した。

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いっぽうで加盟店の開拓にも積極的で、数千人規模の営業マンが全国津々浦々の大小さまざまな店舗を回ってPayPay導入を促すというドブ板作戦で、キャッシュレス決済とはまったく縁のなさそうな業種の店までも取り込んだ。この加盟店開拓の過程で「客が金額を入力して店が確認する」方式の決済方法が、他の方式と比べて導入コストが抑えられるという理由から、小規模な個人店を中心に採用が広まったようなのだが、今回の詐欺事件で「低コストなりのリスク」も露わになってしまった格好だ。

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さらに加盟店開拓でいえば、PayPayは決済にかかる手数料を長年無料にしていたことも、加盟店の増加に一役買っていた。ただ、先述の通りそれも今年の秋には終わり、以降は1.5%~2%台ほどの手数料負担が店側に強いられると予測されている。数字的にはさほど大きくない印象も受けるが、それでも商いの小さい個人店にとっては大きな負担で、特にPayPay利用者の割合が多くなっている店としては、今後どうするかは相当の悩みどころとなっている模様。場合によっては、これを機にPayPayから離脱する店も多く出てくる可能性があるというのだ。この状況にソフトバンクグループを率いる孫正義氏はどう対応するのか、にわかに注目が集まっている。

他社には到底真似のできない資本投下によって急拡大に成功したものの、ここに来て曲がり角を迎えつつあるPayPay。今回の詐欺事件が、国内では盤石と見られていたPayPayが地盤沈下を起こす「蟻の一穴」になる可能性も、もしかするとあり得るかもしれない。

Next: 「店だけ損して孫は損しない見せかけだけのシステム」

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