9人乱立、情勢混沌 菅首相お膝元、政局影響も―横浜市長選

2021.08.01
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by 時事通信


官邸に入る菅義偉首相=7月30日、東京・永田町

官邸に入る菅義偉首相=7月30日、東京・永田町

 首相のお膝元で行われる横浜市長選(8月8日告示、同22日投開票)がにわかに注目を集めている。候補9人が乱立して情勢が混沌(こんとん)とする中、首相は自民党の前国家公安委員長(56)を支援する姿勢を鮮明にした。市長選の行方は直後に控える自民党総裁選や衆院選に影響を与える可能性もある。
 「小此木さんの政治活動を全面的かつ全力で応援します」。首相は7月14日、首相官邸で小此木氏と選挙広報用の対談に臨み、支援を明言。同29日発行の地域情報紙に意見広告として掲載された。自民党市連が自主投票を決める中、党総裁の首相が態度を明確にするのは異例だ。
 市長選の構図は複雑だ。自民党県連会長だった小此木氏は6月下旬、菅内閣の閣僚を辞任し、市長選出馬を表明。政府がカジノを含む統合型リゾート(IR)整備を推進する中、IRの横浜誘致取りやめを公約に掲げた。このため、「小此木氏は首相とたもとを分かったのでは」ともささやかれた。
 これに対し、過去2回、自民党の推薦を受けた現職の林文子市長(75)は7月中旬、IRの横浜誘致推進を訴えて、4選出馬を表明。自民市議や地元経済界は小此木、林両陣営に割れ、保守分裂選挙の様相となっている。
 首相は官房長官時代からIRの旗振り役を務め、情報紙の対談でも市長選出馬には「困惑した」と本音を漏らした。昨年9月の総裁選で首相の選対本部長を引き受けるなど、小此木氏は首相にとって盟友でもあるからだ。
 関係者によると、小此木氏が5月下旬に出馬の意向を伝えた際、首相は「そうか」としか答えなかった。しかし、首相はその後、小此木氏支援にかじを切った。首相は小此木氏の父彦三郎元建設相の秘書を務めるなど「50年近い付き合い」を重視したとみられる。自主投票の公明党も首相と足並みをそろえる構えだ。
 2人のほかに、7人が名乗りを上げている。元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)には立憲民主党が推薦を出し、共産党が支援にまわる。日本維新の会参院議員で前神奈川県知事の氏(63)や元長野県知事の田中康夫氏(65)らも知名度を武器に勝機をうかがう。
 公職選挙法によると、最多得票者の票数が有効投票数の4分の1に満たなければ、市長選は再選挙となる。関係者の間では、候補乱立の状況から再選挙の可能性も取り沙汰されている。
 先の東京都議選で自民党は過去2番目に少ない33議席にとどまり、党内では「敗北」と受け止められている。自民党総裁や衆院議員の任期満了が迫る中、「本来勝って当然」(公明党幹部)と目される横浜市長選で首相がつまずけば、「選挙の顔」として疑問視する声が党内で広がる可能性も否定できない。(2021/08/01-07:08)

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