日本同様のコロナ禍にあって社会的弱者が苦しい生活を強いられている韓国で、とあるピザ店店主の「善行」が感動を呼んでいます。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、そんな心温まる実話を紹介。さらに報道で当エピソードを知った韓国市民の反応を取り上げ、「まだまだこの世は生きる価値あり」と記しています。
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ピザ屋さんには善人がおおい?
今年3月2日号で「鉄人7号」マッポ店を紹介した。同じような話がまた韓国で話題だ。
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8月12日、SBSの報道によると、7歳の娘を独りで育てているAさんは、コロナ禍で職場を失った後、経済的な困難を経験してきた。幼い娘の面倒を見てくれる人がおらず、仕事を見つけるのも容易ではなかった。弱り目に祟り目で娘が皮膚病を患い、大きな支出が続いた。
娘の7回目の誕生日。「何が食べたいか」と聞くと、娘は「ケーキ、ピザ、チキン」と答えた。しかし、Aさんの手元にある金は571ウォン(5円くらい)だけだった。Aさんはそれまで数回注文したことのあるピザ・チキン店に「7歳の娘を一人で育ててるんですが、今はお金がないのでツケでお願いできますか。20日の基礎生活費(生活保護費)をもらった日にお支払いします。必ず」と頼んだ。
少しして届いたピザの箱には、「お気軽に!また、娘さんがピザを食べたいと言ったらご連絡下さい」と大きな字が書かれていた。ピザと共に暖かい文句を残した店主は、32歳の青年ファン・ジンソンさんだった。
ファンさんは、「(Aさんの)負担を減らすため、伝票に“決済完了”と書いておいたんです。私はこんなに大きなことになるとは思っていなかった」とし、Aさん親子に向かっては「いつも元気でいてほしい。厳しい時期にみんなで頑張っていきたい。娘さんが食べたいならいつでも連絡してほしい」と語る。
一方、ファンさんの善行に、ポータルサイトの地図には、すでに該当地点の星印が殺到している。ネットユーザーは「まだ世の中は生きるに値する」「ファンさんの店にカンパに行こう」と該当支店の住所を皆で共有し、ファンさんにエールを送る動きが活発になっている。
3月2日の鉄人7号店と内容的にはほぼ同じだけれど、また全然別のところでこういった善行が行われていると思うと、こっちも心があったかくなってくるというもの。
基礎生活費としていくら出るのかわからないけど、なんとか一日も早く仕事が見つかるよう祈るばかりだ。20日までにはまだまだ日数があるのに571ウォンしかない。どうやって20日まで乗り切るのだろうか。そんなことも頭をかすめるが、神様は越えられない試練は与えられないというではないか。なんとか持ちこたえるはずだ。
8月16日現在、この一人親を助けるためにどうすればいいかという問い合わせも殺到しているという。まさにこの世は、まだまだ生きるに値する。ヴィクトール・フランクルでなくとも、人生にイエスと言いたい気持ちだ。
(無料メルマガ『キムチパワー』2021年8月17日号)
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