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「破綻ルート」に入った中国経済。規制連発の習近平は何に焦っているか?労働力不足と中所得国の罠=勝又壽良

高い経済成長率を続けてきた中国がここに来て大失速。GDP成長率は2030年までに2%と米国並みになると予測されており、米国を追い抜くという夢は儚く消えるであろう。さらに「中所得国のワナ」という現実に直面して、中国共産党の政策に関する巧拙が問われる事態が起こりうる。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年8月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

西側諸国の信用を完全に失った習近平

飛ぶ鳥を落とす勢いできた中国経済だが、ついにその成長源泉の底が見えた。はっきり言えば、成長力の源であった労働力が枯渇化したのだ。こうした欠陥の上に、計算外の要因としてパンデミックと米中対立のデカップリングが加わった。

習近平氏の性格によるのだろうが、民族主義を前面に出してしまった結果、今さら他国との協力体制を築けない根本的な欠陥が、中国経済の前途を塞いでいる。強烈な「戦狼外交」が、中国の対外的な信用を失墜させた。今後は、自ら選んだ「茨の道」を歩むほかない。

さらに悪いことには、習氏が「終身国家主席」を目指す体制を敷きつつあることだ。

西側諸国は、この狙いが世界覇権を目指すことにあると結びつけている。習氏の存命中は、米中冷戦が不可避と、西側諸国を身構えさせているほどである。これも、中国にとっては不幸な出来事である。

苦境に立つ中国経済は、技術・資本・貿易などの面で西側諸国の交流を得られないという決定的な事態になっている。

こうして、2030年までにGDP成長率は、2%まで低下するという予測が出るほどになっている。詳細は、後半で取り上げたい。

規制連発の裏にある焦り

私は、一貫して中国経済について冷静な見方に立ってきた。この視点は、最近の中国における一連の「ドタバタ劇」によっても裏付けられるであろう。

中国は昨年11月以降、独占禁止・金融・データセキュリティー・社会的平等などの分野で、50件以上の措置を取ったと報道されている。7月末まで、週に1件以上のペースとされる。最近はもっぱら「社会的平等」が脚光を浴びている。またの名は、「共同富裕」の実現である。

中国は建国以来、国家社会主義の立場を明らかにしてきた。それが突然に「共同富裕」実現というのである。建国以降、この目標の実現を目指してきたはずだが、現実は全くそうでなかった。所得格差の程度を示す「ジニ係数」は、2000年の0.599から2020年は0.704に大きく悪化している。中国は主要国でも格差が最も著しい国である(クレディ・スイス調べ)。

「ジニ係数」は、所得分配の不平等を示すものである。0~1の間で「ジニ係数」が算出され、1に近いほど不平等であることを示し、0に近いほど平等とされている。通常は、0.4ぐらいである。中国は、2000年で0.599とすでに高く、2020年は0.704まで悪化している。この間に、全く対策が取られなかったのは、すでに「社会主義の看板」が泣く事態に陥っていた証拠だ。

こうした「不平等の極致」に落込んだのは、不動産バブルによる値上り益が富裕階層へ転がり込んでいた結果である。この富裕層は、多くが共産党幹部とされている。一般に一人で2~3軒の住宅を保有し、資産運用の実を上げてきた。しかも、いまだに全土で固定資産税が実施されていないのだ。全人代(国会)で、固定資産税採用の議論が出るものの、ことごとく闇に葬られ「検討課題」で先送りされてきた。全人代に席を置く共産党員が、固定資産税の成立を妨害したと言える。

習氏は、この全人代で賛成を得られなければ「国家主席3選」が実現しないという事情にある。

そこで代わりとして、所得分配の不平等をもたらした「犯人」として、民間企業経営者を標的にしている。政府の「共同富裕論」は、高額所得層に寄付金を迫っている。

Next: テック産業を規制して製造業へ回帰。高額所得層を叩く理由は?

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