人型ロボットだけじゃないイーロン・マスクの大本命。テスラ製スパコンDojoの桁違いの実力とは?

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8月19日に開催されたテスラの技術イベント「Tesla AI Day」。国内の一般マスコミでは、その席でイーロン・マスクが開発を宣言した人型ロボット「Tesla Bot」ばかりが取り上げられましたが、専門家が思わず嘆息するような技術の発表が多々あったようです。その模様を紹介するのは、「Windows95を設計した日本人」として知られる米シアトル在住の中島聡さん。中島さんは今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、既存の自動車メーカーには不可能なテスラの自動運転システム開発手法や、目眩すら覚えたという同社のマルチ・チップ・モジュール等を詳細にレポートしています。

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プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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Tesla AI Day ~驚異の自動運転技術と半導体チップ

先週、Teslaが「Tesla AI Day」というイベントを開きました。去年の9月に開かれた「Tesla Battery Day」以来の技術イベントです。

株主や消費者向けのイベントではなく、技術的なことを深掘りするイベントで、対象としているのは、私のように技術面からTeslaのことを見ている技術者向けのイベントで、一番の目的は技術者のリクルーティングにあります。

前半は、自動運転ソフトウェアの話で、まずは自動車、路側帯、車線などの物体認識技術を解説し、その後、その情報を利用して、どうやって自動運転を行なっているかを解説しています。

この分野に興味のある技術者にとっては、どんな教科書を読むよりも良い勉強になると思います。専門用語がたくさん出てくるので、初心者には少し辛いかも知れませんが、このビデオを見ながら、分からない言葉が出てきたら調べる、という見方でもとても良い勉強になると思います。私が、大学で人工知能の授業を担当していたら、このビデオを見た上で、感想を含めたレポートを学生に書かせるだろうと思います。

ちなみに、人工知能で使われている深層学習は、ニューラルネットと呼ばれる一連(=レイヤー上に並べられた)の行列演算を活用していますが、前半のレイヤーがFeature Extraction(特徴抽出)と呼ばれるもので、そこで「丸いものがある」「斜めの直線がある」などの基本的な特徴を抽出し、その情報を元にして、後半のレイヤーで「この部分に自動車がある」「ここに車線が斜めに走っている」などの高度な物体認識を行なっています。

この図(53:00から)は、Teslaの技術者がHydraNetsと呼ぶ構造で、物体認識、信号認識、車線認識の3つのタスクを行う際に、Feature Extractionの部分までは同じネットワーク(一連の行列計算)を使うことにより、それぞれ別々のニューラルネットワークを使うのと比べて、大幅に計算量を減らしているそうです。

さらに面白いのは、Feature Extractionの結果をディスクにしまうことにより、ニューラルネットワークのトレーニングに生かしているという点です。

Teslaの自動運転は、まだ不完全なため、ドライバーが常にハンドルを握って、いざという時には、自らハンドルを切って事故を防ぐ必要がありますが、その動作をTesla車は、自動運転ソフトの誤動作と認識して、サーバーにシグナルを送るように出来ています。

Teslaはサーバー側でそれらの情報を活用して、自動運転ソフトを日々改良していますが、必要に応じて、新しいアルゴリズムをテスト用に自動車に送り込み、(実際の運転はせずに)シャドーモードで動かすことによりテストを行なっているそうです。

つまり、「路肩に止まっている緊急車両を見逃した」ケースがあれば、それに対処するようにソフトウェアをアップデートした上で、そのソフトを実際の車両に送り込み、前もってディスクにしまっておいたFeature Extractionの結果をベースに、アップデートした上位のレイヤーに渡し、正しく緊急車両を認識したかどうかのテストが行えるのです。

こんなソフトウェアのデバッグの仕方が出来てしまう点がTeslaの凄さであり、ソフトウェアのことが理解出来ていない人々が会社を経営し、ソフトウェアの開発は外注に丸投げしてしまうような既存の自動車メーカーには、決して出来ない芸当です。

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