風評対策「必要なことすべて実行」 処理水放出で政府中間まとめ―東電福島第1原発

2021.08.24
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by 時事通信


原発処理水に関する基本方針の実行に向けた関係閣僚等会議で発言する加藤勝信官房長官(左から2人目)=24日午前、首相官邸

原発処理水に関する基本方針の実行に向けた関係閣僚等会議で発言する加藤勝信官房長官(左から2人目)=24日午前、首相官邸

  • 東京電力福島第1原発の敷地内に設置されている汚染水タンク=2013年3月、福島県大熊町

 政府は24日、東京電力福島第1原発でたまり続ける放射性物質を含んだ処理水の海洋放出をめぐり関係閣僚会議(議長・加藤勝信官房長官)を首相官邸で開き、風評被害が出た場合に魚介類を買い上げる基金の創設など、対策の中間取りまとめを示した。今後、漁業関係者などと意見交換を進めた上で年内に具体的な行動計画を策定し、海洋放出へ理解を得たい考えだ。
 政府は2023年春ごろをめどに、放射性物質の一種であるトリチウムを含む処理水を薄めて海に流す方針だが、新たな風評被害につながるとの不安が関係者の間で根強い。漁業だけでなく商工業などにも影響するとの懸念がある。加藤官房長官は会議で「現場の声を把握し、必要なことはすべて実行する」と強調したものの、政府の思惑通りに海洋放出への理解が進むかは依然不透明だ。
 今回の対策には、スーパーの販売員や旅館従業員などに向けた研修の実施や、国際原子力機関(IAEA)などの協力を得て国内の消費者や海外に海洋放出の安全性を発信する内容が含まれる。また、農林水産物などの取引実態を分析し、加工や流通など関係事業者に公正な取引の徹底を求め、地元産品の「買いたたき」防止にも取り組む。
 このほか、全国の小中学校や高校に配布している「放射線副読本」に処理水の科学的性質などについて記載を追加することや、修学旅行を福島県に誘致して「教育現場での理解醸成に取り組む」(萩生田光一文部科学相)ことも盛り込んだ。
 こうした安全性の発信に努めても、風評被害による需要の落ち込みで販売減少や価格下落が起きた場合、基金を活用して福島県産以外も含め冷凍可能な水産物を一時的に買い上げる。冷凍できないものについては販路を拡大するなどして救済する方針だ。
 東京電力ホールディングス(HD)には迅速に賠償するよう指導すると明記した。同社の小早川智明社長は会議後、記者団に対し「(中間まとめの)内容を重く受け止める。風評被害が生じた場合の賠償もしっかり準備する」と話した。同社は賠償の枠組みを近く公表する予定。(2021/08/24-18:28)

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