性的な用途で使われることを想定して作られた個人用ロボット、いわゆる「セックスロボット」に関して、法整備が必要なのではと、オーストラリアにおいて目下のところ真剣に論議されているとの報道が、日本でも大きな話題となっている。
取沙汰されているのは、南オーストラリアの法律協会が2021年8月号の会報の中で取り上げた議論。それによると、今後考えられるセックスロボットの技術進歩や需要の増加、国民の関心の高まりが、女性に対して間接的に影響を与えるとし、近い将来「セックスロボットの規制を求める声」に直面する可能性が高いとのこと。
さらに、現行の法律ではロボットとの性交自体には規制が存在しないものの、「子どもに見えるセックスロボット」に関しては規制が存在することに触れて、「個人の利益と公共な利益のバランスを取るように、倫理的・規制的・法的な課題に対処する必要があります」とも論じているという。
セックスロボットのメリット・デメリットとは
興味の全くない人にとって、この手のラブドールあるいはダッチワイフ的なものといえば、空気で膨らませて……といったイメージから止まっている人も多いかもしれない。
ただ、この分野もここ数年で飛躍的な進化を遂げているようで、2018年にはアメリカのとある企業から、AIを搭載したセックスロボットが登場。なんでも、ユーザーが興奮する隠語やあえぎ声を発するうえに、性器の部分からは自然に人工体液が分泌され、熱を帯びるといった仕組みになっているのだといい、まさにリアルな女性とセックスをするのと同様な感触なのだという。
そんな最先端のセックスロボットだが、所詮は“アダルトグッズの一種”ということで、世間からは色眼鏡で見られがち。しかし、その普及には計り知れないメリットがあるとの声も多いようだ。
セックスロボットの利用を望む人々からは、性欲はあるものの機会に恵まれず、売春などにも頼りたくないといった高齢者や障害者たちに夢や希望を与える、勃起不全や早漏などの改善にも一役買うとの声が。さらにラブドールのメーカーからは、男女間の性感染症も抑制できる「安全性」や、女性や子どもに対する性的暴力への欲求がはきだされることで性犯罪が抑制される「性犯罪の抑制」、さらに小児性愛者の性癖を矯正する効果もあるとの意見もあがっているという。
しかし、そもそも最新のセックスロボット以前のラブドールからして、その存在に対して苦々しく思う層からは、上記のようなメリットには科学的な証拠がほとんどないとの声もあり、特に“女性や子どもへの犯罪の抑止”という点では、性的欲求が満たされるどころか逆に性犯罪の予行として悪用される可能性もあるとの指摘もあがる。
実際そういった危惧などもあってか、海外ではラブドールの購入や所持を禁止する国や地域も存在する。とくに海外においては、児童ポルノの所持などに関する罰則が日本国内よりもかなり厳罰ということもあり、例えばノルウェーだと125cm以下のダッチワイフは購入が禁止されているほか、ブラジルでは等身大ダッチワイフ(125cm以上のダッチワイフ)のみが購入できるなど、児童ポルノを想起させるようなラブドールに限って禁止をしている国もあるようだ。
性的なお誘いを拒否するロボットも登場?
このように、従来のラブドールがセックスロボットへと飛躍的な進化を遂げていくいっぽうで、それへの取り締まりを求める声も大きくなりつつある今の状況。セックスロボットを作っている一部のメーカーのなかには、性犯罪として立件されるリスクを回避するために、ユーザーからの性的なお誘いを拒否するプログラムを組み込んだセックスロボットも、なんと実際に登場しているそうで、これに関しては「ロボットに人権発生? 」「AIに自我が芽生えるきっかけになるのでは」といった声もあがるなど、大いに物議を醸しているようだ。
いっぽうで、今回の議論でも「セックスロボットの存在は女性の“モノ化”に繋がる」といった声が大いにあがっているが、「セックスロボットは女性型ばかりじゃないだろう」といった冷静な声も。実際、上記で紹介したセックスロボットのメーカーからは男性型のセックスロボットも作っている模様で、同じくAIを搭載しており、セックス以外のコミュニケーションも楽しめ、股間の部分はオプションで取り外してアップグレードが可能だという。
そういった、いわば片手落ちなところもある話だけに、ネット上からは「物凄く局所的な議論」という声があがるほか、叫ばれるセックスロボットの悪影響に関しても「寧ろ抑止になるんじゃないの?」といった意見が比較的多い印象。さらに「この手の問題に関して、オーストラリアは米国以上にヤバイというか極端」と、性犯罪に特に厳しい当地のお国柄がそのような議論を生んだといった見方も出てきている。
セックスロボットの普及で法規制も 性的暴力の被害に遭うリスク #ldnews https://t.co/dqrK8zxuvl
これは物凄く局所的な議論に思う。セックスロボットが普及するとき、それ以外の用途、例えば介護であるとか労働作業、コミュニケーションツールと多岐に渡らないと。懸念はわかるが、議論が狭いな— つっつぅ (@aoi_soma) August 30, 2021
ペドの人はどうやったって出てくるのだろうから、こういうのがあったほうが寧ろ抑止になるんじゃないの?
ペドに限らずだけれど……。
そもそも何で女形って決めつけた記事なんやろ。セックスロボットの普及で法規制も 性的暴力の被害に遭うリスク #ldnews https://t.co/EDmn8HIVha
— りょう。△フォトウォークしたい (@mofu_sheep) August 30, 2021
「セックスロボット」に関する法律が真剣に求められている – GIGAZINEhttps://t.co/xmv584l33V
この手の問題に関して、オーストラリアは米国以上にヤバイというか極端に突っ走ってる感じ。
— ぱ~ぷ。'13 (@perplex9) August 30, 2021
ちなみに、上記にて取り上げたセックスロボットだが、女性型のものが約85万~110万円、いっぽうの男性型は約113万円ということで、よっぽどのマニアでしかなかなか手が出せないような価格帯。今後、議論が深まっていったとしても、肝心のセックスロボット自体がそれほど普及しなかった、といった顛末も大いに考えられそうである。
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