総務省により「2年縛り」に規制がかけられ、各キャリアがさまざまな囲い込み策で知恵を絞る中、auじぶん銀行が9月1日から「auまとめて金利優遇」の強化を発表しました。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、その仕組みとお得度について、auをメインに利用しているユーザーならではの目線で紹介。各キャリアが傘下の金融事業と連携した囲い込み策を強化していく流れを予測しています。
auじぶん銀行が通常の200倍となる金利優遇策──「2年縛り」を総務省に塞がれる中、金融商品で本格的囲い込み
KDDIとauフィナンシャルホールディングス、auじぶん銀行は8月26日、金融関連の新サービス発表会を実施した。
auじぶん銀行では9月1日から金利優遇施策「auまとめて金利優遇」を強化する。そもそも、普通口座の通常金利は年0.001%となっているが、すでにauカブコム証券の口座を連携させることで、年+0.099%、計0.1%となっていた。
今回からau PAYと口座を連携することで、円普通預金の金利が年+0.05%優遇される。さらにau PAYカードを口座から引き落とさせることで+0.05%となる。結果として、年0.20%(税引後年0.15%)の優遇金利になるというわけだ。ちなみに年0.20%はあおぞら銀行BANKと同じく業界最高金利となる。
この話を聞いて、3つの銀行に散らばっていた資金をできるだけauじぶん銀行の普通口座にまとめてしまった。もともと、仕事柄、株式取引はやらないのだが(経済新聞社系出版社に新入社員として入社したときに口酸っぱく言われた)、NISA口座で投資信託を購入するためにカブドットコム証券に口座を持っていたら、いつの間にかauカブコム証券になっていた。もちろん、auじぶん銀行もサブ的につかっていたので、一気にメイン口座的な扱いになってしまった。
もうひとつ、auじぶん銀行では8月30日から、au PAY残高からauじぶん銀行への自動払出機能をリリースする。これまでauじぶん銀行からau PAYへの残高移動はできていたが、8月30日以降は双方向での移動が可能となる。
この話を聞いて「au PAYなんて、払うのが多く、残高なんて減る一方なのではないか。au PAY残高からauじぶん銀行への自動払出機能なんて意味あるのか」なんて思っていたところ、質疑応答で「もらったポイントをau PAY残高にして、この残高を預金口座や証券口座に移して運用する」「月の予算を決めている人が、月初めに一定金額を口座からau PAY残高にチャージし、月末に余った残高をau PAY残高→口座に払い出すことで予算管理する」といった使い方ができるようだ。
確かにキャンペーンなどでポイントをもらえることも多い。au PAYの場合、特定のルートでチャージするだけで、多額のポイントがもらえるキャンペーンを仕掛けていたりもする。そう考えると「au PAY残高を現金に」という流れも理解できる。当然、毎月、継続的にもらえるのは通信料金を支払った際のポイントであり、これも、au PAYカードでauじぶん銀行での口座引き落としにすれば、ポイントがもらえるだけでなく金利優遇も受けられる。
通信プランや割賦販売での顧客囲い込みが総務省から塞がれつつある中、今後、金融商品での囲い込みがKDDI以外のキャリアに広まっていきそうだ。
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