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渋谷区の高齢者“スマホ無料配布”に賛否。情報格差解消が目的も端末は2年前のサムスン製。個人情報漏洩後も続く行政「LINE偏重」を危惧する声も

渋谷区とKDDIが、65歳以上でスマホを保有していない約1,700名の同区民を対象に、スマホを無料で貸し出す実証事業を開始したとの報道が、広く注目を集めている。

KDDIが発表したリリースによると、9月6日から開始されたこの実証事業は、高齢者のデジタルデバイド(情報格差)解消による生活の質向上を目的としたもの。スマホは2年間無料で貸与され、参加者向けスマホ勉強会が開催されるほか、遠隔での操作サポートや、参加者専用のコールセンターを設けることで、活用をアシストするという。

スマホには、渋谷区防災アプリや健康アプリ、キャッシュレスアプリなどがインストールされ、それらの利用ログから個人の特定ができない形で利用状況を可視化。高齢者のスマホ利用の活性化に関する課題を抽出したいという狙いもあるという。

「お年寄りこそスマホは必要」期待の声も

昨年からのコロナ禍以降、ワクチン接種の予約や買い物時のポイント還元など、年代を問わずスマホを活用するシーンが激増。今後もワクチンパスポートをはじめ、各種行政サービスのデジタル化が大いに進みそうとあって、いままでスマホに縁の遠かった高齢者たちも、一通りは使えるようにならないと、日常生活すらままならない状況も大いに考えられる。

そのいっぽうで、過去には高齢者のユーザーに対し、スマホ販売店のスタッフがいわゆる“オプションのベタ付け”や、必要以上にハイスペックで高価な機種や大容量SDメモリーカードを勧めるなどの事案が頻発し、大きな問題となったこともあった。

その点、今回の事業は行政が配布して、その使い方まで教えるだけに、その点では安心そう。ネット上からも「お年寄りこそスマホは必要」「世代による情報ギャップが埋まるといいね」と、お年寄りの情報格差解消を試みる今回の事業に対する期待の声も多く聞こえてくる。

配布されるのは2年以上前のサムスン製モデル

しかし、そのいっぽうでは「業者が潤うだけ」「税金がもったいない」といった否定的な見方も。2年間の無料貸与後は、恐らくはいずれかのキャリアと通常の契約を結ぶことになりそうだが、その際にわざわざ新たな端末を買って他のキャリアに移るようなことをするか?ということから、ある種の“囲い込み”ではないかという見方も出てきている。

さらに、反対意見の間で大いに取沙汰されているのが貸与される端末に関する件。渋谷区のホームページによると、2019年4月に発売されたサムスン製の「Galaxy A20」が貸与されるようで、ネット上からは「A20ってまだ売ってんのか」「なぜ韓国製品?」「在庫処理」といった声とともに、機種選定や入札の詳細も明らかにすべきといった意見もあがる。

今回の件を報じた記事のなかには、渋谷区が区民に対してLINEを活用した情報配信や防災アプリなどのデジタルサービスの提供を進めているものの、スマホを持たない高齢者はそれらを享受できていないことが、今回の事業の背景にあるといった記載も。しかし、だからといって高齢者以外の層がその手の行政サービスを使っているかといえば、それも何とも言えないところ。

【関連】LINE、中国に個人情報ダダ漏れ発覚もヤフートップは取り上げず。「その風穴は開けちゃダメ」との声も

そもそも、この渋谷区のデジタルサービスにしても、あるいは様々な自治体などのワクチン予約など、なぜか行政は何かにつけてLINEを活用したがる傾向があるが、今年3月にはLINE上にあるユーザーの名前・電話番号・メールアドレスなどといった情報が、中国の関連会社からアクセス可能だったという、いわゆる“個人情報ダダ漏れ”が発覚したばかり。それだけに、行政の「LINE偏重」に対して違和感を覚える向きは多く、またLINE経由の詐欺被害に遭うお年寄りが増えるのでは、といった弊害を訴える意見もある。

このように賛否両論飛び交う格好となっている、今回の渋谷区とKDDIの取り組み。実証事業は2年間続けられるということだが、果たして懸案であるデジタルデバイド解消に繋がる成果が出るのか、大いに注目されるところだ。

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