【書評】生きるヒント満載の「落語」に学ぶ、世知辛い時代の処世術

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さまざまな魅力的かつ個性あふれるキャラクターが登場する落語ですが、中でも多くの人を惹きつけるのが、間抜けでおっちょこちょいな「粗忽者」。そんな愛すべき登場人物の生き方の中に、現代を生きる私たちが参考にすべき振る舞いがあるようです。今回の無料メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』では、人気落語家が著した「粗忽者に学ぶ処世術のすゝめ」的書籍を紹介しています。

【一日一冊】落語に学ぶ粗忽者(そこつもの)の思考

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仕事も人間関係も生き苦しい人のための 落語に学ぶ粗忽者(そこつもの)の思考
立川談慶 著/WAVE出版

粗忽者(そこつもの)とは、一般に軽率でそそっかしい人です。落語にはそんな「ドジ」で「間抜け」なキャラクターが出てきます。

著者が教えるのは、落語という笑い話の中に、人口過密な江戸の世の中を生き抜いてきた先人の智恵が詰まっているということです。つまり、そんなバカでドジな人間がドタバタしながらも、本人は真剣に、お門違いなことをしていることが笑いを誘う噺が多いのです。

“バカ正直”な男…ひどい状況に陥ったにもかかわらず、そこで夢中になって努力し続けてしまう、愛すべき‘粗忽者”。(p178)

日本人はすぐに謝る、自己肯定感が低いと言われますが、実は、そうした人のほうが江戸時代は生きやすかったんではないのか、と著者は推測しています。つまり、過密な江戸でご近所さんとお付き合いしていくには、ちょっとしたトラブルにもすぐに謝ったほうがいい。そして、失敗してもあまり気にしない間抜けのほうが生きやすいのです。

それにちょっと心配性のほうが気配り目配り心配りで失敗するリスクが極限まで低くなって、これもまた世の中を渡りやすいということなのです。

確かに日本の世の中は、絶対に失敗しない心配性の人のほうがうまくいくのかもしれません。

人口過密な“長屋”というコミュニティで生き抜いていくには、自己肯定感をできるだけ低く保ち、うまく謙遜し、世辞を言い合うのが賢い処世術だったのです。(p5)

聞かずに放っておいた落語のCDがあったので、この本で紹介されていた「品川心中」「孝行糖」を聞いてみました。今はYouTubeで落語は簡単に聴けるようです。いい時代になりました。こうして聞いてみると、落語というのは江戸時代のオーディオブックだったのではないかなんて思いながら聞いておりました。

この本を入り口にして、皆さんも落語の世界を楽しんでみてはどうでしょうか。

立川談慶さん、良い本をありがとうございました。

【この本で私が共感した名言】

「とりあえず謝っちまえよ。謝ってれば、小言は頭の上を通り抜けていく」…江戸っ子たちは「腰の低さ」や「謝りグセ」こそが人間関係を円滑にしてくれたり、自分を守ってくれたりする…(p114)

「自信がなくて自分のことを嫌いなくらい繊細な人のほうがむしろ高感度は高い」という事実を知ってください。(p55)

“心配性”でちょうどいいんです。小さな「気疲れ」を積み重ねていれば、不思議なもので、突然大きなトラブルに見舞われるリスクを最大限に減らせます。(p20)

【私の評価】★★★★★(95点)

<私の評価:人生変える度>
★★★★★(お薦めです!ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(買いましょう。素晴らしい本です)
★★★☆☆(社会人として読むべき一冊です)
★★☆☆☆(時間とお金に余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては価値を見い出すかもしれません)
☆☆☆☆☆(こういうお勧めできない本は掲載しません)

image by: Marco Gallo / Shutterstock.com

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著者/本のソムリエ(読書普及研究所代表)

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