軍事アナリストも赤面?米陸軍大佐を呆れさせた陸自のお粗末なプレゼン

shutterstock_1337491094
 

災害時の活動など、なくてはならない働きをしてくれるわが国の自衛隊ですが、本来専門であるはずの“軍事”においては「平和ボケ」と言われても否定できない部分があるようです。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、陸上自衛隊のある陸将によるプレゼンテーションがお粗末で、同席した米国の陸軍大佐に「自衛隊は戦えませんね」と指摘された事実を伝えます。細かく些細な指摘と捉える向きに対しては、杓子定規で臨機応変さがないと戦場では敗北すると、厳しく忠告しています。

プレゼンに出る「戦えない自衛隊」

日本国内では10月31日投開票の総選挙に向けて各方面の動きが加速していますが、それとは関係なく、外国から日本に注がれている冷ややかな眼差し、それも友軍である米軍からの厳しい視線についてお話ししておきたいと思います。日本国内のお祭りだけで盛り上がっていては平和も繁栄もなくなるという話です。

「小川さん、自衛隊は戦えませんね。あれを見れば一目瞭然です」そう言ったのは米国陸軍の大佐。「あれ」と指さされたのは、陸上自衛隊の某陸将のプレゼンテーションでした。舞台上の巨大スクリーンにはパワーポイントの資料が映し出されています。

その向かって左手に演者の席があり、そこにパソコンを前にした某陸将が座り、スライドを切り替えるごとに「はい次」「はい次」と声を掛けています。自分でパソコンを操作する訳ではありません。某陸将が声を掛けると、後ろに控えている4~5人の幹部たちがパソコンを操作してスライドを送っていきます。こんなことは演者の某陸将が自分のパソコンのテンキーなどを使って簡単にできることなのですが、やる気配はありません。

おまけにスライドがひどい。とにかくびっしりと文字が書き込まれていて、発表を聴く側に伝えようとする気持ちなど毛頭も感じられません。細大漏らさず必要事項を書き込んでおかないと、責任を問われるという意識だけが伝わってきます。要するに、某陸将がやっていた発表は一種の儀式であり、裏方も儀式の要員なのです。

同じとき、米軍側は陸軍大将が舞台に上がりましたが、舞台の中央に立ち、アップルのスティーブ・ジョブズよろしく一人で話を進めます。スライドも手持ちのレーザーポインタの機能を使って進めたり、戻したりしていきます。身振り手振りやユーモアと表現力も豊かですし、スライドも聴衆に訴える視聴覚効果をにらんでデザインされていました。

なんでそんな日米の姿勢の差が問題なのかと思われるかも知れませんね。日米の共同研究の発表の場なので、そんな厳しい評価は必要がないように思われるかも知れませんが、米軍の大佐の指摘は正しいのです。まさに戦っている軍隊からのコメントなのです。

発表が儀式化している様子を見れば、自衛隊には杓子定規の動きしかできないのは明らかです。決められたことはそれなりにできても、臨機応変な対応は無理だとわかります。しかし、戦争においてはこちらの裏をかいてくる敵に柔軟に対応できなければ敗北します。米軍の大将のスタイルは米国では普通のものですが、融通無碍とも言えるほどの柔軟性を秘めています。こんな所にも戦える米軍、戦えない自衛隊の姿が浮き彫りになっているのです。

自衛隊側でも、例えば2015年夏まで東部方面総監だった磯部晃一陸将の発表や講演のスタイルは米軍の大将と同じでした。私は嬉しくなり、自衛隊も変わりつつあると思ったのですが、そうではありませんでした。磯部陸将は自衛隊では数少ない例外で、私より20歳以上も若い陸将や陸将補が旧態依然たる儀式を踏襲しているのです。これは海上自衛隊、航空自衛隊でも同じです。

こうした細かいところから柔軟性を取り戻していかないと、組織の硬直化は進むばかりです。外国から注がれる眼差しは、米軍からのものだけではありません。敵国が冷笑を浮かべて日本の弱点を洗い出していることを忘れてはならないのです。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 軍事アナリストも赤面?米陸軍大佐を呆れさせた陸自のお粗末なプレゼン
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け