感染者数「激減」のいま肝に銘じる、“with”したくないウイルスのこと

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劇的な減少を続ける新型コロナウイルスの感染者数に、国全体がひと息ついているようなムードが広がっています。「withコロナ」での経済活動を模索する人間同様、コロナの方も「withヒューマン」を模索しているのではないかと考えるのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。山崎さんは、「新型コロナウイルスもやがては風邪の一つになる」との言説について、その可能性を認めつつも、確かではないと前置き。単純ヘルペスウイルスのように潜伏するのがウイルスにとっても最も都合のいい「withヒューマン」かもしれず、その厄介さを思えば、現在の寛解期にも油断はできないと伝えています。

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「新型コロナウイルスもやがては風邪の一つになる」。最近よく聞く学説の一つだ。確かにSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、SARSコロナウイルス2(=新型コロナウイルス)以外のコロナウイルスは高々風邪症候群の原因になるくらいであるから、やがてはそういった予言的学説の通りになるのかもしれない。

ウイルスの方にしてみても宿主である人間を悉く殺すようなことをしてしまっては自分たちの生存自体が危うくなる。それは困るから、多くの人いろいろな人種に感染しながら地球を何周か回っているうちにいつしか死なせない程度の毒性に落ち着いて「やがて風邪になる」という訳である。こんなふうに一応生存原理に適った説明はできる。

もっとも、ウイルスという非生物的存在に、生物一般における所謂生存原理を当てはめるのが適当かどうかという問題もあるから本稿ではこれ以上の深入りはやめておくことにする。ただこういった学説を無理矢理に文系的観点から解釈してみると興味深いことが言える。我々人間が「withコロナ」を模索しているのと同様に、ウイルスも「withヒューマン」たろうとしているのではないか、と。

少々荒唐無稽な話になって来たのでここで若干修正舵を入れる。実は人間と共生関係にあるとしか言いようのないウイルスが現に存在するのである。例えば口唇ヘルペスなどの原因となる単純ヘルペスウイルスがそうである。一たびこのウイルスに感染すると現代医学では根治は望めない。一生付き合って行く他ないのである。

とは言っても口唇ヘルペス自体はアシクロビルという薬で比較的簡単に治すことができる。つまり症状として出て来た分なら叩けるが神経節内に潜伏されるとそれ以上はどうしようもない、そういった性質のウイルスなのである。水痘・帯状疱疹ウイルスもこの仲間になる。こちらの体力が低下したり、何らかのストレスで免疫力が落ちた時などに症状としてその姿を現す、見ようによっては大変卑怯なウイルスなのである。前に共生関係とは言ったが、こちらには何の益もない片利的関係だから強制関係の方が表現としては適当なのかもしれない。

新型コロナウイルスに感染し重症化すると呼吸器系・神経系に深刻なダメージを受けることが分かっている。肺は再生しない臓器と言われている。神経も容易に治るものではない。こういった不可逆性の障害をもたらす疾病とはたとえ強制でも共生など看過できよう筈もない。とは言え向こうは未知のウイルスである。呼吸器系だけでなく神経系を侵すところも気味が悪い。ヘルペスウイルスのように神経節内に潜伏されたらそれこそ始末に負えない。

「新型コロナウイルスもやがては風邪の一つになる」。そうかもしれない。が、確かなのは今はまだそうではない、ということである。寛解期の見積もりはとかく甘くなり易い。くれぐれも油断せず、やがて来る第六波(どんな大きさかは分からないが)に備えたいものである。

image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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