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イオンのキャンドゥ買収、ファンと投資家の反応は真逆?デフレ時代の勝者「100円均」も原材料費・人件費の高騰でいよいよ迎える曲がり角

流通大手のイオンが、100円ショップ「キャンドゥ」の子会社化を目指してTOBを行うと発表し、消費者の間で大きな話題となっている。

報道によるとイオンはTOBにくわえて、キャンドゥ創業家の城戸一弥社長の資産管理会社の株式取得によって、キャンドゥ株51%の取得を目指すとのこと。まず15日から11月24日まで37.18%を上限に1株2,700円、14日の終値を45%上回る価格でTOBを実施するという。

城戸一弥社長をはじめ主要な株主とは、すでにTOBに応募する契約を交わしており、友好的買収となる。買収後も現社長らは経営陣に残り、キャンドゥブランドも維持される予定だという。

市場は好感も消費者の反応は複雑

1993年に埼玉県にて創業したキャンドゥは、日本国内はもとより海外にも進出を果たしており、その店舗数は2021年4月末時点で1123店に及ぶ。2018年にはDCMホーマックとFC契約を締結したことで、それ以降はDCMグループのホームセンター内への出店も目立っていた。

ただ100円ショップ業界は、ダイソーが売上高でのシェアで60%を超えるダントツの存在で、それに同シェア約23%のセリアが続く形。現在キャンドゥはそれに続く3番手の位置だが、売上高でのシェアで上位2社とは大きく引き離されている状況だ。

しかし今回の報道を受けた15日のキャンドゥ株は大量の買いが集中し、買い気配のままストップ高の2,258円(400円高)に達する展開に。TOBの影響ももちろんあるが、市場ではイオン子会社化による業績回復の期待も膨らんでいるようだ。

いっぽうで消費者からの反応は複雑で、「イオンだけで生活が完結するな」「イオン経済圏が日本各地に出来つつある」といったものから、なかにはイオンの子会社になればキャンドゥで売ってる商品の品質が下がりそうといった、身も蓋もない意見も。また他方では、現時点で全国各地のイオンモールなどに出店しているダイソーやセリアはどうなるのかを心配する声も多いようだ。

曲がり角迎える100円ショップ業界

長引くデフレを背景に、ここ10年ぐらいは右肩上がりの成長を続け、コロナ禍の昨今も日用品や生活雑貨類の需要が急増したことにより、業界全体としては好調だという100円ショップ。各社ともに新規出店を積極的に進めている状況で、21年度中には大手5社の累計店舗数は8,000店を超えるとの見方もある。

ただ出店競争の激化によって、当然のように同業間での顧客の獲得競争は激化の一途。さらに、このところはプラスチックなど原材料価格の上昇や、多くの製品が作られる東南アジアや中国での人件費高騰、また海上輸送のコストも増大しているなど、100円ショップ業界にとっては厳しい状況となっているのも事実だ。

そんななか、100円ショップ業界の巨人であるダイソーは新業態の生活雑貨ブランドである「Standard Products by DAISO」を渋谷の一等地にオープン。価格の多くは330円で、なかには550円~1,100円(いずれも税込)のものもあるという高級路線だ。従来の店舗でも最近では高単価な商品がチラホラと存在し、さらに近年では「THREEPPY」という300円ショップも展開しているダイソー。しかしこの新業態で扱っている商品は、これまでのダイソーのイメージを一新させるような、ベーシックながらも洗練されたデザインのものが多く、訪れた客の間からは「無印良品のパクリ?」「ダイソー感がまったくない」といった声も。今月下旬には新宿にも同業態の2号店を出店する予定だといい、薄利多売の一辺倒から脱却しようとする動きがより顕著になっているようだ。

食品スーパー業界では、兵庫県に本社を置く「関西スーパー」を巡って、阪急阪神百貨店などの運営会社「エイチ・ツー・オー リテイリング」と、横浜市に本社を置く「オーケー」が激しく対立するなど、再編の動きが激しくなっている。

同じく小売の100円ショップ業界は、すでにダイソーが一人勝ちな状況のいっぽう、これまでのビジネスモデルが厳しくなりつつあるという、ある種の曲がり角に差し掛かっている状況下で、今回のイオンによるキャンドゥ子会社化が業界全体にどう影響を及ぼすのか、大いに注目されるところである。

Next: イオンに入居しているダイソーやセリアは叩き出されてキャンドゥに?

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