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投票所の鉛筆1万本を職員が削るバカらしさに批判殺到。選挙カー、ビラ1枚1枚に証紙貼りほか旧態依然の選挙は組織戦を続けたい政権側の思惑か

岸田首相による“前倒し奇襲”によって、準備期間が異様に短かった今回の衆院選。各地の選挙管理員会も選挙の準備で大変だったようだが、その様子を伝える報道に対して、有権者から多くの批判が集まる形となっている。

取沙汰されているのは、群馬県太田市において投票所で使う鉛筆1万本を1本、1本削っているという報道だ。同市では感染防止対策として、抗ウイルス機能があるという鉛筆を購入し、それを市職員が他の仕事の合間に1本ずつ削っていたとのこと。映像を見てみると、流石にナイフなどで削っているわけではなく、電動の鉛筆削り器を数台使って作業をしていたようだ。

この様子に対して、ネット上では「バカらしい」「無駄が多すぎる」との声が噴出。また、使う際に1本ずつ削る必要のない「ペグシル」を使えばいいのにといった声もあがるなど、まさに総ツッコミといった状況なのだ。

一向に改善されない選挙の“ムダ”

ネット上での反応で急浮上する格好となった「ペグシル」は、その名前自体はあまり聞き馴染みがないが、要はゴルフのスコアカードに書き込んだり、競馬場などで馬券を買う際にマークシートを塗りつぶす時に使われる、プラスチックの軸に鉛筆の芯の先っぽが付いたような“アレ”だ。

実際、今年8月に行われた仙台市長選では、感染防止対策の一環として採用されていたというペグシル。鉛筆と比べれば候補者名などの文字は少々書きにくそうだが、価格のほうは抗菌仕様の鉛筆よりかは安くあがるようで、なによりも職員が鉛筆を1本ずつ削る時間や手間を考えれば、ペグシル利用のほうが圧倒的に良コスパなのは間違いないだろう。

それだけに、今回の報道にツッコミが入るのも無理のないところで、ネット上では「そんなことも思いつかないのか」などと、その思考硬直ぶりにほとほと呆れるといった声も続出している状況だ。

国政に関わる全国規模のものから各市町村レベルのものまで、日本中のどこかしらで行われている選挙だが、思えばそのシステムは令和の世になっても効率化されることなく、旧態依然のままである。

例えば、選挙ビラやポスターに貼られている「証紙」なども、日本の旧態依然な選挙システムを象徴するもののひとつ。デマの流布や選挙妨害などを防ぐためのものだが、候補者側はこれを1枚1枚貼らないと選挙違反になるため、各陣営はその作業で大わらわになるという。

また、この時期になるとどこからともなく現れる「選挙カー」も、以前から評判が相当悪いにも関わらず、無くなる気配がまったくナシ。それどころか今回の選挙では感染拡大を懸念して、いわゆる「ミニ集会」が以前のように開けないということで、選挙カーの需要がより高まっているとの話もある。

さらにこの選挙カーに関しては、その音声がYouTubeなどでの動画配信中に紛れ込んでしまうことで、配信者の居住地がある程度特定されてしまうとの恐れも浮上している。うるさくて迷惑どころか、プライバシーの観点からも今やまったくそぐわないものとなっているのだ。

組織と資金が無いとまともに戦えない日本の選挙

このように、以前からことあるごとに指摘されている問題がまったく改まらない日本の選挙だが、これは為政者側があえてそうしているのではないか、といった声も一部からはあがっている。

選挙ビラやポスターに証紙を1枚1枚貼ったり、それらを掲示したり各家庭にポスティングするのは、十分な人手がないとできない作業。つまりは、組織力とそれを維持する資金力を有する陣営しかできないわけで、いうなれば既存の政党が有利な状況がずっと続いているわけだ。同様のことは、 車両レンタル代やガソリン代、ウグイス嬢への報酬などで多額の費用がかかる選挙カーにも言えそうだ。

いっぽうで旧態依然といえば、有権者の多くが待ち望んでいる「オンライン投票」にしても、コロナ禍のこのご時世は導入へと前進するためのある意味でのチャンスとも言えたのだが、まったくもって実現する兆しがない。このことに関しても、オンライン投票の導入で下手に若者層などの投票率がアップしてしまった際に、特に困るのは与党側だから……といった見方も広がっている状況だ。

就任直後の記者会見では、政治不信が広がる国民たちから信頼感をしっかり取り戻し、昨今の低投票率を改善していきたいといったことを、殊勝に語っていた岸田首相。ただ実際のところは投票率を上げる気などさらさらないのは、選挙にまつわる様々な旧弊をまったく改善する素振りをみせないところからも明白だろう。

Next: 「よっぽど投票率上がってほしくないんだな」

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