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テスラ時価総額1兆ドル突破、トヨタの4倍に。世界の「EVシフト」鮮明、追従できぬ日本の自動車メーカーはガラパゴス化必至か

米株式市場で電気自動車(EV)メーカー・テスラの時価総額が、ついに1兆ドル(約113兆円)の大台を突破したことが話題になっている。

契機となったのは、レンタカー大手のハーツ・グローバル・ホールディングスによる、テスラから10万台のEVを購入するとの表明。この報を受けてテスラ株は25日に、一時前週末比14.9%高の1045ドル02セントを付け、上場以来の高値を更新した。

時価総額1兆ドルを超える企業は、アメリカにおいてはアップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル親会社)、アマゾン・ドット・コムに次ぐ5社目となる。

ノルウェーでは新車販売の約8割がEVに

ハーツによる10万台のテスラ車の購入だが、その費用は42億ドル(約4,700億円)で、今年11月以降にはアメリカ各地の空港などでレンタルできるようにし、さらに再来年末までには、世界各国の100を超える市場で導入するという。

今回のようにレンタカー業界でのテスラ車の採用が進み、EVを一度でも利用したことのある人がより増えれば、その後の本格普及に向けて一段と弾みがつく可能性もあるとも指摘されている。

いっぽうで、国連の気候変動枠組み条約事務局は今月25日に公表した報告書で、世界の温室ガス削減目標に関して、現状ではパリ協定の達成に至らないと警告。さらなる温室効果ガス排出の削減に取り組む必要が叫ばれるなか、欧米では従来のガソリン車からEVへのシフトがかなりのペースで進んでおり、例えば北欧のノルウェーでは今年9月の新車販売のなんと約8割がEVだったとも報じられている。

このような状況もあってテスラは、先日発表した21年7~9月期決算で、売上高が前年同期比57%増の137億5,700万ドル、また純利益のほうも4.9倍の16億1,800万ドルとなるなど、ダブルで過去最高を更新。このところ自動車業界の間では、半導体の不足が大きな懸案事項となっていたが、自社でAIや専用半導体の設計・開発ができるというソフトウエア人材の充実ぶりで、それも難なく乗り越えたようだ。

EV一本に絞れない日本の自動車メーカー

このように世界中でEVへのシフトが進むなかで、その動きに完全に乗り遅れていると指摘され続けている日本の自動車メーカー。ちなみに時価総額で言えば、国内企業で最も多いとされるトヨタ自動車で現在約32兆円、約2,800億ドルとなり、時価総額1兆ドルを超えたテスラのおよそ4分の1。テスラが時価総額でトヨタを抜いたのは20年7月のことで、この1年少しで大きく突き放される格好となっている。

EVへと完全に舵を切った感のある諸外国に対して、日本では電気と他の動力を組み合わせて走るハイブリッド車(HV)が、電動車のなかで幅を利かせている。またプラグインハイブリッド車や水素を主な動力源とする燃料電池車など、様々な車種が製造・販売されている状況だ。

これは、自然エネルギーや原子力などの発電比率が高い諸国と比べて、日本では火力発電がまだまだ主力なため、下手にEV化を進めると逆にCO2排出量が増える可能性があるという事情もあるとのこと。また台風や地震といった自然災害が多く、さらに北日本などは雪国でもあることも大きいといい、災害時には非常用の電源として活用できるとの見方もあるいっぽうで、インフラが麻痺すれば充電等がままならないといった恐れも考えられるというのだ。

この他にも自動車業界における従来からの雇用を守るためなど、様々な事情によってEV一本には絞れない状況となっている日本の自動車メーカーだが、そういった状況に対して「自動車でも日本はガラパゴスの道を進むのか」といった声が多くあがっているのも事実。将来的にはEVへと進んでいくのは間違いなさそうな情勢とはいえ、日本の自動車メーカーが思い描く緩やかなEV化が、果たして世界各国を席捲する急激なEV化の波に対応できるのか、心配の声は募るばかりだ。

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