「負の遺産」に首相沈黙 モリカケ、野党は追及【21衆院選】

2021.10.28
0
by 時事通信


衆院選の応援演説に耳を傾ける人々=28日午前、東京都江戸川区の西葛西駅前

衆院選の応援演説に耳を傾ける人々=28日午前、東京都江戸川区の西葛西駅前

 岸田文雄首相(自民党総裁)が衆院選で、安倍、菅両政権の「負の遺産」に沈黙している。先の党総裁選では説明重視の姿勢を示したが、影響力を保つ安倍晋三元首相に配慮しているようだ。一方、野党は盛んに取り上げ追及している。
 「国民の悩み、苦しみを書きつづってきた。皆さんの声を聞いて新しい時代を切り開く」。首相は28日、青森市の演説で、懐から「岸田ノート」を取り出してこう強調。今回の衆院選で演説を締めくくる際の定番だが、森友・加計学園問題や「桜を見る会」、河井克行元法相夫妻の選挙買収事件などには一切触れなかった。
 総裁選で首相は当初、森友問題などについて「国民が納得するまで説明」すると強調したが、安倍氏の反発が伝わるとトーンダウン。18日に開かれた衆院選の党首討論会でも「必要なら説明を行う」と述べるにとどめた。
 衆院選の公示後は、元法相の地盤だった広島3区で「大変な事件を起こした。心からおわびしなければならない」と謝罪した程度。これ以外のほぼ全ての演説で、不祥事に言及していない。
 こうした姿勢は当事者も同様だ。安倍氏は28日、カジノ汚職で実刑判決を受けた前職が出馬を辞退した東京15区で遊説。閣僚時代に現金を受け取った甘利明幹事長は地元の神奈川13区で街頭に立ったが、いずれも一連の問題については語らなかった。
 これに対し、野党側は「隠す、ごまかす、改ざんする政治を変えなければならない」(立憲民主党の枝野幸男代表)などと攻勢を強める。同党の岡田克也元外相は28日、JR浦和駅前で「タイは頭から腐る。トップに責任が相当ある」とこき下ろした。
 共産党の志位和夫委員長も高知市で「『モリ・カケ・サクラ』。国政私物化疑惑が次々起こったのに何一つ究明していない」と指弾。その上で「こういう政治を首相は引き継ぐ姿勢だ。もう自民、公明の政治を終わりにしよう」と訴えた。
 野党は衆院選で、政府の新型コロナウイルス対応に照準を合わせていたが、新規感染者数の急減で攻めあぐねている。経済政策をめぐっても、与野党双方が「分配」を競い合い、差別化に苦慮。「負の遺産」への姿勢を、数少ない対立軸と見定めているとみられる。(2021/10/28-20:17)

print

人気のオススメ記事