米大統領選の敗北で人気を失ったトランプだが、バイデン政権への批判が高まるにつれ、再び人気が復活してきている。いまアメリカで何が起こっているのか。トランプ支持者の動きについて解説する。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2021年10月29日の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
かつての勢いを失ったトランプ
2022年11月の中間選挙に向けて、勢いを回復しつつあるトランプの動きについてお伝えしたい。
バイデン政権の成立以降、トランプは依然として共和党ではもっとも影響力のある人物ではある。だが、トランプにはかつてのような勢いがなくなっていた。
バイデン政権はまがりなりにも新型コロナウイルスのパンデミックを押さえ込み、経済の正常化に向けた動きを加速させた。また、巨額の失業給付金や事業の支援金などの支給により、仕事を失った国民の生活を支えた。
また、2020年の大統領選挙で不正があったとしてトランプ派が提訴した裁判には、トランプ派はことごとく敗訴し、バイデンの勝利が正式に確定した。
パンデミックで影響を受け、手厚い失業給付を受けたトランプ派の人々からも「バイデンでいいのでは?」という声も上がるようになっていた。
これとともに、ツイッターにおけるトランプに関するツイート数は大幅に減少した。またトランプが5月に立ち上げたブログは、アクセス数が伸びずに閉鎖した。
さらに、トランプ支持派がときおり開催するトランプラリーに結集する人々の数も減っていた。
トランプは、来年から「トュルース・ソーシャル」という独自のSNSを立ち上げるとしているが、この状況ではアクセス数は伸びないのではないかと見られていた。
こうした状況から、一時は全米を二分するほどの勢いがあったトランプだが、急速に勢いを失い、現状のままでは2024年の大統領選挙に立候補するのは実質的に不可能だとする見方が中心になりつつあった。
なぜ?トランプ人気は急回復
しかしながら、夏の終わりくらいからこの状況が大きく変化してきた。トランプの勢いが急速に回復しつつあるのである。それを示す多くの調査結果がある。
10月15日から18日にかけて行われた「キニピアック大学」の世論調査によると、共和党員の成人の間でトランプの好感度は86%、好ましくない評価はわずか10%だった。
また、2024年の共和党予備選挙の初期の世論調査では、すでにトランプが優位に立っている。10月8日から11日にかけて行われたニュース配信サービス、「ポリティコ」の調査では、共和党有権者の47%がトランプに投票すると回答し、他の候補者は13%を超えていなかった。
もし2023年になってもトランプがこのような高い数値を示しているのであれば、彼が候補者になる可能性はかなり高い。さらに、トランプが共和党内でいまだに強い影響力を持っていることを考えると、他の共和党の政治家でトランプに対抗して立候補しようとするものはほとんどいないはずだ。
また、共和党員の相当数がトランプの再出馬を積極的に望んでいることが「ポリティコ」の調査で分かった。共和党の登録有権者のうち、67%がトランプの出馬を望み、望まない人は29%に過ぎなかった。望む人々のうち51%が「間違いなく」出馬すべきだと答えている。
さらに、10月13日から14日にかけて行われたニュースサイト、「ザ・ヒル」の世論調査でも、共和党の登録有権者は77%対23%の割合でトランプ立候補を支持しており、そのうち52%が「強く」支持していることが分かった。また、世論調査会社の「クイニピアック」の調査によると、共和党員の78%がトランプの再出馬を希望し、希望しないと答えたのは16%だけだった。
このような共和党支持者におけるトランプの支持は、時間が経つにしたがって確実に上昇している。5月に行われた先の「クイニピアック」の調査では、共和党員はトランプの出馬を66%支持し、不支持は30%だったのに対し、現在は78%が支持し、不支持は16%となっている。
共和党支持者だけではなく、有権者全体の調査でもトランプは一定の人気を維持している。10月13日から17日にかけて行われた「グリンネル大学」の世論調査によると、有権者の40%がバイデン大統領に、40%がトランプに投票することが分かった。トランプの人気は現職の大統領に並んでいる。