忘れないで、投票権持たぬ隣人 パックンさんら、1票への思い―衆院選

2021.11.02
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by 時事通信


お笑い芸人のパックンさん(事務所提供)

お笑い芸人のパックンさん(事務所提供)

  • 有権者に向けた思いをつづった作家の柳美里さんのツイート(ツイッターより)

 今回の衆院選小選挙区の投票率は55.93%にとどまり、戦後3番目の低水準だった。この数字を複雑な思いで見つめているのが、日本で暮らしながら投票権を持たない在留外国人だ。米国出身のお笑い芸人パックンさんら、国内で活躍している外国籍の3人に、有権者に伝えたいことや日本の選挙への思いを聞いた。
 日本で25年以上暮らすパックン(本名パトリック・ハーラン)さんは低投票率の背景について、「米国と違い、日本は国のトップを国民全員で決めることができない制度。『私たちの政権』という認識が薄いのでは」と指摘。近年の外国人労働者の増加に触れ、「彼らが暮らしやすい社会を考えることは、回り回って皆にとって暮らしやすい社会へとつながる。投票先は自分自身の生活を第一に決めるべきだが、選挙に行けない人にも思いをはせてみては」と提案した。
 「参政権を持っている人には、持っていない人の境遇や立場を、頭と心の片隅に置いていただけるとうれしいです」。韓国籍の芥川賞作家、柳美里さんもパックンさんと同じ思いを抱き、先月ツイッターにこう投稿した。「日本人だけでなく、288万人超の外国籍の人々の命と労働も織り込まれて、この国はできている」との思いだったが、外国人にも参政権を求める趣旨と誤解した人々から、「投票したければ国に帰れ」などと中傷が殺到した。
 茨城県土浦市で生まれた柳さんは小学校時代、「お前の家には投票用紙が来ないだろう」といじめられた記憶が今も残る。「投票したくてもできない人の中には、子どもや闘病中の方々、そして災害などで亡くなった方もいる」と話し、「私にとって、有権者の1票はとても重く尊い。投票権がある人は、ない人のことをせめて忘れないでいてほしい」と願った。
 早稲田大特命教授のロバート・キャンベルさん=米国籍=は、外国人参政権に慎重な立場だが、柳さんと同様にネット上で排外的な攻撃を受けた経験があるという。「柳さんの投稿は世界中の移民や市民権を持たない人々の思いも代弁するもので、胸が熱くなった」と吐露。「自分の1票は、持たざる人にとって特別で大切なもの。そう感じ取れる心が、健全な愛国心だと思う」と力を込めた。(2021/11/02-13:31)

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