岸田新総理の「令和版所得倍増計画」で日本は豊かになるのでしょうか?これまで続けていた新自由主義から脱却して「富の再分配」を重視するとしていますが、どんな政策が進められるのでしょうか?“竹中平蔵切り”の代償として、私たちは大増税を覚悟する必要がありそうです。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年10月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
アベノミクスに反旗?岸田新総理の「脱新自由主義」
自民党総裁選挙において岸田文雄氏は「脱新自由主義」という言葉を使いました。この表現を用いたことで、永田町では「安倍元総理に反旗を翻した」と受け止めて騒然としたとの報道もありました。「そこまで言い切るのか…」という印象とのことです。
新自由主義は、日本では中曽根政権に始まり、小泉政権で本格的に政策の中心となり、その後、少しアクセルを緩める場面もありましたが、安倍政権は、いわゆるアベノミクスで、再び新自由主義のアクセルが強く踏まれてきました。
アクセルを踏んだと言っても大胆な金融政策だけで、財政出動も規制緩和も、十分な成果を出すことはできませんでした。成果といえば唯一、経済特区構想を実現したことくらいでしょうか。
菅政権は安倍政権の継承を主張、総裁選挙でも、高市早苗元総務大臣は「サナエノミクス」として、安倍政権にまで至る新自由主義を継承すると訴えました。
その流れを、岸田新総裁は、総裁選選挙で断ち切ることを宣言したのです。
格差是正を重視「富の再分配」を訴える岸田政権
もっとも新自由主義経済は、厳密には小泉・竹中路線でのことで、第2次安倍政権から菅政権に至るまでは、金融政策以外は、国民に迎合するポピュリズム的な政策ばかりだったと思われます。
物価目標設定とセットとなるはずの財政出動は不十分で、市中にお金だけがばらまかれただけで、そのお金が従業員給与や設備投資に回ることもなく、結局は行き場を求めてマーケットに流れていって、ただただ株価を押し上げただけに過ぎませんでした。
「小泉内閣以降の新自由主義的政策は、我が国の経済に成長をもたらす一方で、持てる者と持たざる者の格差が広がりました。成長だけでは人は幸せになれません。成長の果実が適切に分配されることが大事です」……岸田新総裁のメッセージです。
経済成長から「富の分配」の重要性を訴えたものですね。
「新自由主義から転換し、成長と分配の好循環を実現するため、『国民を幸福にする成長戦略』『令和版所得倍増のための分配施策』などを進めます…」と続きます。
この言葉の背景には、失われた10年ともいわれた長期不況は、欧米や南米のような供給不足による不況ではなく、需要不足による不況として生じていたものだから、小泉政権下での新自由主義的政策路線は、この不況を欧米と同様の構造的不況と位置づけたことにあるという指摘があります。
「構造改革なくして成長なし」……供給サイドの強化は、その後の株価下落と失業率の増加を招いたとされています。