中国は35年間も「一人っ子政策」を続けたために、そのツケが今になって習近平政権に重くのしかかっています。結婚適齢期の男女数をみると、男子の数が3,000万人以上も多くなっていて、花嫁を迎える競争条件が厳しくなっています。家・クルマ付きが必須条件で、中国の自動車市場は世界一の規模になり、中国の住宅価格は高騰しています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年11月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
兵役人口「一人っ子政策」で激減へ
長年続けてきた「一人っ子政策」の結果、兵役要員となる若者が減少しています。
中国は米国に対抗するために軍事費を増額していますが、兵役につく年代の人員に制約が強まっています。35年間も「一人っ子政策」を続けたために、兵役人口が減少するようになりました。
台湾統一、南沙諸島への進出など、覇権拡大を進めるうえで、兵力の拡充は不可欠です。
今から人口増加策をとっても、兵役要員に育つには20年近くかかります。
自国で兵役要員を賄えなければ、海外から傭兵を雇わなければならなくなりますが、それ自体が政権には不安定要因になります。
急速に進む少子高齢化
「一人っ子政策」の結果、中国では急速に少子高齢化が進んでいます。
2015年の国勢調査では65歳以上の人口がすでに1億4,400万人に達し、世界一となりましたが、全人口に占める高齢者の割合はまだ10.5%でした。
ところが5年後の2020年の国勢調査によると、この65歳以上の高齢者の割合は13.5%に急上昇しています。しかも、2020年の出生数は前年比20%減と、過去最大の減少となりました。
2015年には「一人っ子政策」は廃止され、今では「3人まで」子どもを持って良いことになっています。それでも、出生数は減り続けています。
その結果、かつての日本以上に速いスピードで少子高齢化が進んでいます。
これは日本と同様に、年金制度を圧迫します。年金をもらう高齢者の数が急増している一方で、生産年齢人口が減少し、年金を支える側が減っています。
結局、税負担が増えますが、年金制度を見直さないと、いずれ日本と同様の年金財政の危機を招きます。