なぜ、給料日翌日にいなくなった従業員を“即解雇”してはいけないのか?

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給料日の翌日から出社しなくなってしまった従業員…連絡もとれず行方知れずとなってしまったこの人を解雇とすることはできるのでしょうか?無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者である社会保険労務士の飯田弘和さんが法律を踏まえて回答しています。

行方不明労働者への対応

ある建設会社さんから、こんな質問を受けました。

「給料日の翌日から、急に出社しなくなった従業員がいます。電話もつながらず、行方が分かりません。どうすればよいでしょう」

この従業員が、このまま無断欠勤を続ければ、当然、解雇の正当な理由になります。2週間以上の無断欠勤というのが一つの目安でしょう。

ここで問題となるのが、解雇は労働者への通知が必要であるという事です。いくら正当な解雇理由があっても、解雇の通知が相手に届かなければ解雇は成立しません。そうなると、この従業員を解雇するには、“公示送達”を行うことになります。

しかし、わざわざ必要な書類を揃えて裁判所に公示送達を申し立てるような、手間や労力の掛かることは行われていないのが実情でしょう。ほとんどの場合、“黙示の退職の意思表示”があったものとして、依願退職として扱っているのではないでしょうか。

もし、このような取り扱いをするのであれば、性急すぎる対応は避けるべきです。退職手続きを済ませた後に、この行方不明労働者がひょっこり戻ってくることがあります。この場合に、「不当な退職手続きだ」「不当解雇」だと言われないためにも、行方不明期間がある程度必要でしょう。

この期間に関する明確な定めなどはありませんが、2週間から1か月程度は必要でしょう。その理由として、労基法20条で「解雇を行う場合には、30日前に労働者に予告しなければならない」とされていることや、労基署の解雇予告除外認定に係る認定基準として「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」というのが挙げられているからです。

また、このような従業員であっても、働いた分の賃金は支払わなければなりません。賃金が“現金手渡し”の場合、原則として、労働者が取りに来た際に手渡せば問題ないのですが、いつまでも取りに来ない場合、会社はずっと賃金債務を抱えていることになってしまいます。そのような状況をスッキリさせるのであれば、“供託”をするしかないでしょう。

もし、この失踪した労働者が“外国人技能実習生”だった場合、管理団体への報告が必要であり、管理団体から外国人技能実習機構へ失踪の報告が行われます。

外国人労働者の失踪トラブルの背景には、低賃金(残業代の不払いを含む)や長時間・過重労働があるとされています。日本人・外国人の別なく、きちんと法令を遵守した雇用関係を築いてください。

労働関係法令においては日本人と外国人を区別していませんので、日本人労働者に対して適用される法令は、外国人労働者にも同じように適用されます。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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