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「きもの松葉」違法販売で社長ら逮捕、クレカ作れぬ高齢者が被害に。認知症の顧客に高額契約を何度も結ばせる“次々販売”の疑いも

大阪や奈良などで店舗を展開する呉服販売店「きもの松葉」が、客から複数回にわたり前払い金を受けとるなど違法な販売方法をとっていたとして、29日に社長や同社の債務管理部長が割賦販売法違反(無許可営業)容疑で逮捕された。

報道によると、きもの松葉では高額な着物を客に売る際、複数回に分けて「前払い金」を払わせた上で商品を渡していたとのこと。商品の引渡し前に前払い金を2回以上に分けて客から受け取ることは、店が金だけ受け取り商品を渡さないなどのトラブルを避けるため、国の許可が必要とされるが、同社では許可を得ていなかったという。

また、別の報道によると、きもの松葉では高齢女性ら17人に対して、着物や宝石など総額1,672万円分の商品を分割で前払いさせ、販売していたとのこと。さらに同店の顧客には認知症の高齢者もいたとされ、警察がその実態を調べているという。

問題視されるも取り締まれぬ「次々販売」

きもの松葉に対しては、1人の消費者に対して業者が商品を次々と販売させるという「次々販売」を行っていると、かねてから問題視されていた模様。

この「次々販売」だが、特に一人暮らしや判断力が不十分な高齢者が狙われる傾向があるようで、一度契約すると「お得意様」として別の悪徳業者にその情報が流れて、次々と勧誘に来るケースもあるのだとか。しかし、現行の法律では「次々販売」自体を問う規定がなく、そのため今回は割賦販売法違反での摘発に至ったという。

1980年代には1兆8,000億円規模と言われていた着物の市場。しかし、若者層を中心にした「着物離れ」が顕著になったことで、現在ではそれが2,700億円程度と約6分の1にまで縮小しているという。近年はコロナ禍によって、冠婚葬祭のイベントごとが少なくなっていることも、需要縮小に繋がっているようだ。

そうなればどこの着物店も、ここ数十年はまさにジリ貧の状況が続いていることは想像に難くないが、とはいえこのような販売方法に手を染めてしまったとしては、きもの松葉のみならず業界全体へのイメージダウンは否めないところ。ネット上ではそのことを心配する声も多くあがっている状況だ。

悪徳業者に付け込まれた“クレカ難民”

いっぽうで、今回の逮捕理由となった割賦販売法違反、複数回に分けて前払い金を払わせるという販売方法だが、それが横行した背景には「クレカを作れない高齢者」が増えていることも、大いに関連がありそうだ。

キャッシュレス決済が様々な店舗で導入されるようになった昨今。これまでは現金払い・無借金主義を貫いてきた高齢層も、そういった時流に乗って初めてクレジットカードを作ろうとするも、クレジットヒストリーが皆無な点、さらに年金生活の場合だとたとえ貯蓄があっても年間収入の少なさが響いて、審査に通らないというケースが多く聞かれるとのこと。

【関連】キャッシュレスで詰む高齢者たち。上級国民以外はクレジットカードを作れない…どう対処する?=岩田昭男

きもの松葉では、クレカを持っていない高齢者に対しても高額な着物を販売できるよう、このような違法な前払いを導入していたとも報じられている。クレカでの決済なら限度額による歯止めが効くだろうが、今回のような販売方法、ましてや認知症の老人が相手なら、まさに青天井といったところだろう。高齢者を喰い物にする商法というものは昔から存在するが、今回の件はこういった“クレカ難民”も格好の的とされた格好だ。

Next: 「着物業界って若い人に売ることを辞めてるから…」

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