わかりづらい日本の年金制度。国民年金と厚生年金の2階建てにした理由とは

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日本の公的年金の支払いは、国民年金と厚生年金の2階建ての構造となっています。少しわかりにくいこのシステムですが、なぜわざわざ2つに分ける必要があったのでしょうか?今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、 その理由を戦前戦後にまでさかのぼり、詳しく解説しています。 

同じ老齢の年金なのに、違う年金の2つに分けなければならなかった理由

今の公的年金の支払いのベースは、国民年金からの老齢基礎年金と厚生年金や共済からの老齢厚生年金となっています。

未納期間以外の年金保険料を納めた期間が10年以上あれば、65歳になると国民年金から老齢基礎年金が支払われます。全ての人が老齢基礎年金を受給します。

それを受給すると同時に、今まで厚生年金や共済に加入してきた人は過去の給料に比例した、報酬比例部分の年金を受給します。

年金はすべての人がこの2階建ての形となっています。

なお、今までずっとサラリーマンだったから厚生年金にしか加入してないような人は、老齢厚生年金だけじゃないの?というと、このような人も国民年金から老齢基礎年金が出て、その上に老齢厚生年金という形で2階建てで支払います。

国民年金は20歳から60歳までの加入期間に比例した年金を支給し、加入期間が同じならみんな平等な年金額となります。厚生年金は過去の給与に比例した年金を支払います。

同じ老齢の年金なのに、どうしてわざわざ2つに分けてるのか。これに関しては今から70年ほど前の戦前戦後まで遡る必要があります。あまり記事が長くならないように、できるだけ短く話します^^;

まず、当時を振り返りましょう。

社会保険としての年金ができたのは昭和17年6月にできた肉体労働者への労働者年金保険法が最初と思われがちですが、昭和14年4月(昭和15年6月施行)にできた船員保険が始まりであります。

船員は戦時体制中の輸送力の増強と、海上という特殊な環境での仕事、長時間労働等で船員を確保するのが容易ではなく、そのために年金の給付を作る事が優先されたのであります。

また、海軍などの船が沈没させられても恩給などの給付が国から出ますが、その他の普通の船員の船が沈められても何の保障もありませんでした。

なので船員の保障をするために、医療保険だけでなく年金も保障される事になりました。

なお、船員保険ができた当初の年金は50歳からの支給でした。

その後、昭和16年3月に労働者年金保険法(厚生年金の前の名称)が公布され、昭和17年6月に施行となりました。近衛文麿内閣の時に公布され、東条英機内閣の時に施行されました。

ちょうど太平洋戦争が始まった昭和16年の社会保障なのでもしかしたら戦費調達に使われたのでは?と思われるかもしれませんが、労働者の士気を高めるための年金でした。

老後も死亡した場合も、障害を負った場合も保障するから憂慮する事なく国のために働いてくれ!と。

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