好奇心が導いた栄誉 真鍋さん、気候変動研究「楽しんだ」―ノーベル物理学賞

2021.12.07
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by 時事通信


ノーベル賞の授賞式後、メダルを手にする米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(右)ら=6日、ワシントンの米科学アカデミー

ノーベル賞の授賞式後、メダルを手にする米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(右)ら=6日、ワシントンの米科学アカデミー

 ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さん(90)は、好奇心に突き動かされて研究にのめり込んできた。「天気予報の社会への貢献はノーベル賞を与えても良い」。かつて講演で語った言葉が現実となった。
 親戚に医者が多く、当初は医学の道を志した。しかしカエルの解剖に失敗し、化学実験では爆発させたことも。あきらめて気象学を学び始めた。
 転機は東京大の博士課程にいる時に訪れた。論文を読んだ米国気象局(当時)のジョセフ・スマゴリンスキー博士が「一緒に研究しないか」と勧誘。当時は博士号を取得しても日本国内に働き口が少なく、1958年に渡米した。
 まだ、日本の気象庁に大型コンピューターが無かった時代に、米国では最新鋭のものが自由に使えた。上司のスマゴリンスキー博士は「私が研究費を調達するから、雑用は一切やらなくてよろしい」と話し、真鍋さんは後年、「とにかく研究に没頭できた」と振り返った。
 米国のライフスタイルも性に合った。受賞決定後の記者会見で「日本人は他人を邪魔しないよう常に気をもんでいる」と指摘。米国ではやりたい研究を何でもできたとし、「私には調和的に生活する能力がない」とも語った。
 67年に「1次元放射対流平衡モデル」を発表。大気を一つの柱に単純化してシミュレーションする画期的な手法を開発した。この時、好奇心から二酸化炭素やオゾン、雲などあらゆる要素を変化させて気温の変化を分析。二酸化炭素の濃度が倍増すると、気温が約2度上昇するという結果が得られた。地球温暖化予測の先駆けとなる成果だった。
 「道草をしたことが、私の温暖化研究のスタートになった」と真鍋さん。これまでの道のりを「気候変動の研究を本当に楽しんだ。私の研究はすべて好奇心だけに動かされてきた」と表現した。(2021/12/07-13:28)

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