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給付方法でドタバタ続く「10万円給付」。国民救済のはずが気付けば政争の具に。松井市長は現金一括給付“無念の断念”表明も「猿芝居」と反応冷ややか

「18歳以下への10万円給付」を巡り、木原誠二官房副長官は9日午前に、地方自治体に全額現金給付を認める条件や運用方法をまとめた指針を「(2021年度)補正予算の成立後、速やかに示したい」と記者会見で発言したと報じられている。

今回の給付に関して、政府は現金とクーポンで5万円ずつの給付が原則としているが、一部の自治体からは、全額現金での給付を求める声があがっている状況。

木原氏の発言はそれらの要望に沿ったものとされるが、いっぽうでクーポン配布について「現金よりも子育て目的への支出が促進される」と、あらためて意義を強調している。

松井市長の“一括給付”に松野官房長官が難色

「全額を現金で支給」する方式に改めるのか、それともあくまでも「現金とクーポンで5万円ずつ」を通すのか。このところの政府による対応は二転三転しているとのも一部メディアからはあがっている。

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政府がこれまでクーポン配布にこだわっていたのは、「財務省の意向を反映した影響」あるいは「お友達企業への業務委託のため」など、いろいろと噂されていた。しかし、現金給付の場合の事務経費が約280億円とされているのに対し、クーポン券の配布になると印刷費や郵送費、人件費、周知するための広報費などで、約967億円に跳ね上がるという試算が出たことで、国民の間から批判の声が高まっていた。

さらにクーポン併用だと、給付の実務を担当する各自治体の人的負担が増えることもあり、一部の自治体の間で全額現金方式を模索する動きが広がる展開に。これまで群馬県太田市や静岡県島田市、さらに大阪市などが全額現金給付の方針を示している。

政府としても、あくまでクーポン券併用をゴリ押しするのは厳しい情勢になったとみたのか、そういった各自治体の動きに関して当初は容認する姿勢を見せていた。しかし、大阪市の松井一郎市長が「10万円を12月27日に一括支給したい」と表明したことに対しては、松野博一官房長官が「現金とクーポンはそれぞれ別の給付措置。同時に支給することは想定していない」と否定的なコメント。この政府によるブレブレな対応が、各自治体のさらなる混乱を呼んでいるというのだ。

松井市長の“断念”表明に反応は冷ややか

ただ、松井市長の「年内全額現金給付」に政府が難色を示したことに関しては、原則プランである「現金とクーポンで5万円ずつ」の原資が、現金5万円は今年度の予備費からなのに対し、クーポンのほうは今後審議される補正予算から充てられるため、松井市長が主張する“一括給付”はそもそも無理筋であるという見方も多い。

また、大阪市の方針を認めると他の自治体も追随する可能性もあり、歯止めが利かなくなる前に政府がブレーキをかけたのではという推測も。さらに、このままなし崩し的に全額現金給付が広がっていくと、そのことを声高にアピールしていた松井市長をはじめとした維新の“手柄”と世間が認知する可能性もあり、自公政権としては来年の参院選も睨んで、そのような状況は避けたいという思惑があるのではといった声もチラホラ聞かれる状況だ。

そんななか冒頭で記したように、政府が全額現金給付に関する指針を“補正予算成立後”に出す考えを示したことを受けて、大阪市の松井市長は9日夕方、現金での一括給付を断念すると表明。松井市長は「残念で仕方ない」と苦渋の判断だったことを匂わせたが、ネット上では「猿芝居」「できないのをわかっていてパフォーマンスに利用したのよ」と、冷ややかな声がかなり多い。

このように実にドタバタ続きの展開となっている「18歳以下への10万円給付」。コロナ禍で困窮する家庭を速やかに救済するための施策はずが、国民不在の議論の末にいつの間にかに政党間の政争の具とされている状況に、国民も怒りを通り越して呆れるばかりといったところだろうか。

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