「昭和・平成レトロ商品」をネットで競り落とす人が陥る“後悔の回避”というワナ

2021.12.20
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「中古品は嫌だ」「他人が使用したものに抵抗感がある」との考えは今や昔。ユーザーの意識変化や「ヤフオク!」や「メルカリ」などの台頭もあり、すっかり中古品に対する認識も変わってきました。しかし、そこには気を付けなければならない注意すべき落とし穴もあるようです。マーケティング&ブランディングコンサルタントとして活躍する橋本之克さんが行動経済学の視点から考察します。

2021年のヒット商品「昭和・平成レトロブーム」は世界レベル!

日経トレンディによる「2021年のヒット商品 」4位に「昭和・平成レトロブーム」がランクインしました。中でも1980年代前後にヒットしたシティポップの再燃は注目を集めています。

昭和の和製シティポップは国内にとどまらず、アジアや欧米の音楽ファンの間でもブームです。今年にEP盤レコードが復刻された、松原みきの1979年作品「真夜中のドア~Stay With Me」は、Spotifyのグローバルバイラルチャートで18日間連続1位を獲得しました。

リアルな昭和を体験した世代の中には、懐かしい曲のCDやレコードを改めて買おうとする人もいることでしょう。当時は自由に使えるお金が少なくて泣く泣くあきらめたCDやレコードを、今なら大人買いすることもできるのですから。

一方、リアル世代の子供を含むZ世代など若い層も、針を置いて鳴らすレコードなどレトロ商品に関心をもっています。さまざまな年代が共感しているのが「昭和・平成レトロブーム」の特徴です。

レトロ商品入手の切り札「 ネットオークション 」

しかし一部の復刻商品を除けば、大多数は発売時期が古いものです。廃盤となったCDやレコードなど、多くの商品が手に入りにくくなっています。そこで頼みの綱となるのは「ネットオークション」です。日々、一般生活者やレトロ商品を扱う業者から、通常のルートでは手に入らない商品が大量に出品されています。

仕組みはリアルなオークション(競売)と同じです。出品された商品に対する購入価格を入札者たちが段階的に上げて入札し、最後の一人以外が脱落した時点の最高額で売買が成立します。

このサービスを提供する最大手は「ヤフオク!」です。1999年に開始し、2018年1月時点の利用者数は1851万人、2018年度の年間取扱高は8899億円にのぼります。

昨今では同じくC:Cの取引ができる「メルカリ」などのフリマも伸びているものの、ネットオークションにおいても変わらず多くの取引が行われています。

実際に参加すると、自分が入札した金額を越える入札者がいないように祈る不安感、落札できた時の高揚感、相場より安く手に入れる満足感など、さまざまな気分を楽しむことができます。

「後悔の回避」で競り落とさずにいられない

しかし行動経済学の視点でオークションを見ると、入札者が“ハマってしまう”危ない心理的な仕掛けがいくつかあります。

まずは「後悔の回避」による危険です。

人は意思決定の場面で、将来的に起きる結果について予測をします。そこで今後、不快な状態に陥って後悔すると想定した際に、無意識にこれを避けようとします。これが「後悔の回避」です。

しかし無意識にこの心理が働くことで 、逆に損をすることもあるのです。ネットオークションに出品された、絶版や廃盤のレトロ商品を見ると「今、競り落とさなければ2度と手に入らないかもしれない」という心理が働きます。将来の後悔を避けようとして、高額で落札してしまうのです。

ただ競り落とした値段が極端に高いと、当然フトコロは痛みます。実はもっと安く手に入る方法があったのではないか、と不安にもなります。落札したものの、別の後悔が生まれそうになります。

しかしながら、この心理は長続きしません。なぜなら、落札したレトロ商品が届いた瞬間から「保有効果」という別の心理が生まれるためです。

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