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習近平が青ざめる中国経済の大失速。不動産バブル崩壊で日本と同じ「失われた30年」へ=勝又壽良

習近平氏は、来年10月の共産党大会で3期目の国家主席就任が有力である。間が悪いことに、肝心の中国経済が失速しているのだ。「ゼロコロナ」対策によるロックダウン(都市封鎖)と、不動産開発企業への融資規制がもたらした「不動産バブル崩壊」が原因である。いずれも、習氏による政策決定によるものである。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

【関連】日本「年収30年横ばい」の黒幕は内部留保。労働生産性に見合った賃金を払わぬ大企業の罪=勝又壽良

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2021年12月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

習近平が受ける2つのブーメラン

「ゼロコロナ」は、中国製ワクチンの効果が欧米製に比べて劣ることから始まった問題である。

欧米製ワクチンは95%前後の効果が認められているが、中国製ワクチンは50%前後とされる。品質にムラがあり均一でない悩みも抱えている。こうして、中国製ワクチンを2回接種したとしても、効果のほどに疑問符が付けられるのだ。

習近平氏自身も昨年1月以来、海外へ出ないほど警戒している。海外要人も北京へ入れず、天津止まりと厳重を極める。コロナ感染を恐れている結果だ。

こういう事情から、1人でも感染者が出ると天地がひっくり返ったような騒ぎでロックダウンする。経済活動に大きな支障が出ているのだ。

住宅不振は、深刻の度を加えている。不動産開発業界2位の中国恒大は、すでに資金繰り難から営業停止状態だ。一部外債は、デフォルト(債務不履行)に陥っている。中国恒大の過剰債務が表面化した7月以来、不動産人気は離散した。住宅業界全体の売上高は前年同月比マイナスに落込み、その幅は次第に大きくなっている。住宅不況も、不動産開発企業への融資基準の設定が原因となった。

住宅不況が深刻なのは、中国経済全体が「土地本位制」と言える状態で動いてきたことにある。土地国有化を背景にして、土地を打ち出の小槌に利用してきたのだ。政府の財源調達において土地売却収入が5割以上という想像を超えたウエイトを占めている。

その地価が、これまで不動産バブルの波に乗って急上昇してきたのだ。

家計は住宅ローンで悩まされてきたが、不動産開発企業と中国政府は「左団扇」の好況に潤ってきた。それが、突然の終幕である。習近平氏が、慌てふためいたのは当然だ。今年7~9月期のGDPが、前年比4.9%に減速して事態の深刻さに気付いたのである。

中国経済の深刻さは、不動産バブルという「あぶく銭」に頼って、拡張政策を続けてきたことが背景にある。

住宅投資・設備投資・公共投資を合計した総資本形成が、何とGDP全体の43%(2019年)も占めていることにあらわれている。世界212ヶ国中で、10位と高位である。

一方の個人消費は39%で世界順位がなんと195位である。中国経済のアンバランスは誰の目にも明らかである。

中国も「バブル崩壊後の泥沼」でもがくことになる

この投資と消費が、不均衡極まる状態の中国経済は、これからどうやって均衡化させるのか。

総資本形成の比率を下げることは即、GDP成長率の低下になってはね返る。中国はこれまで、GDP成長率の嵩上げに狂奔してきた。そのテコが、総資本形成比率の引上げであった。結果的に、個人消費の頭を抑えたのである。

総資本形成比率を下げたからと言って、個人消費が自動的に増えるものでない。この「断層」が、これから中国経済を苦しめるのだ。「断末魔」と言い換えてもいい。

日本経済も、バブル崩壊後にこの苦難の泥沼を這い上がってきた。中国も、同じ道を歩むほかない。総資本形成比率は、日本のバブル崩壊時が34%(1990年)であった。中国より9%ポイント低いのだ。中国の方が、はるかに「重態」である。

中国の方が、日本よりも苦しい道を歩むはずである。中国にその覚悟はあるのか。私は、これまで繰り返し指摘しきたが、いよいよ現実になってきた。中国に解決の便法はない。時間を掛け過剰債務を減らしながら、個人消費の比率を上げるしかないのだ。

Next: GDPを直撃する住宅不況。バブルを割らないための金融緩和が毒を生む

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