日韓関係、失われた10年 常態化する相互不信―新政権発足も展望厳しく

2022.01.04
0
by 時事通信


島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸した韓国の李明博大統領(当時)=2012年8月(AFP時事)

島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸した韓国の李明博大統領(当時)=2012年8月(AFP時事)

  • 取材に応じる韓国のシンクタンク「東アジア研究院」の孫洌院長=2021年12月、ソウル
  • 韓国大統領選の与党「共に民主党」候補、李在明前京畿道知事=2021年11月25日、ソウル(AFP時事)
  • 韓国大統領選の保守系最大野党「国民の力」候補、尹錫悦前検事総長=2021年12月14日、ソウル(EPA時事)

 【ソウル時事】2012年に韓国の李明博大統領(当時)が島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸し、日韓関係が冷え込んでから22年で10年。韓国では大統領選を経て5月に新政権が発足するが、相互不信が常態化し、「元通りにはならない」(専門家)との声も聞かれる。
 ◇途絶えた首脳外交
 李氏は竹島上陸に続き、「(天皇が)韓国を訪問したいのなら、独立運動で亡くなった方に謝罪すべきだ」と発言し、感情的対立はエスカレート。朴槿恵政権下の15年12月の慰安婦合意で関係修復が図られたものの、米オバマ政権の圧力による部分も大きく、長続きしなかった。
 両国首脳が相互に単独訪問する「シャトル外交」は11年12月が最後。元徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた韓国最高裁判決後、19年には日本が対韓輸出管理強化を発動し、韓国で日本製品不買運動が起こった。20年以降は、国際会議を利用したものを含め首脳会談は行われていない。
 韓国のシンクタンク「東アジア研究院」の孫洌院長は「韓国人は日本全体が右傾化したとみるようになり、日本人は韓国と価値観を共有できないと考えるようになった」と指摘する。
 ◇劣等感ない若年層
 文在寅大統領は19年8月、韓国の経済力や国際的地位の向上を背景に「二度と日本に負けない。日本経済を超えることもできる」と強調。与党「共に民主党」の大統領候補、李在明前京畿道知事も昨年10月の演説で「日本を追い越し、世界を先導する国をつくる」と対抗意識をむき出しにした。
 一連の言及は「日本への反発と劣等感」(孫氏)の裏返しだ。孫氏は「既存の世代には、日本に学び、追い付かなければならないという意識が強い。李在明氏らの発言はこうした思考パターンから出たものだ」と解説した。
 一方、「若い世代は日本と経済的な差を感じておらず、劣等感がない」と語る。今の若い世代は韓国が1996年に経済協力開発機構(OECD)入りしてから物心が付き、経済的に停滞する日本の姿しか見ていない。対抗意識が薄い代わりに、協力の必要性も感じにくい層が増えたと言える。
 ◇大統領候補は協力強調
 とはいえ、現状を放置できるわけではない。元徴用工訴訟で日本企業が実害を被る「現金化」に至れば、さらに深刻な対立に陥るのは必至。三菱重工業に続き、昨年12月30日には日本製鉄の韓国内資産にも売却命令が出された。
 李在明氏は12月27日、相星孝一駐韓大使と会い、「未来志向で協力するのが望ましい」と訴えた。保守系最大野党「国民の力」候補の尹錫悦前検事総長もシャトル外交復活などを表明。孫氏は、韓国の若い世代で反日より反中感情の方が強いことを挙げ、「中国への対応が韓日を近づける重要な要因になるのではないか」と期待を示した。
 しかし、李氏は「日本の謝罪が重要」とも主張している。同氏ではなく尹氏が当選しても、国会の議席は共に民主党が圧倒的多数で、政権基盤は弱い。日韓関係筋は「どちらが大統領になっても、各論に入れば解決が容易でないのは同じ。楽観していない」と語った。(2022/01/04-07:21)

print

人気のオススメ記事