実は世界三大織物。奄美大島の伝統工芸品「大島紬」の魅力とは

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2021/12/18

手つかずの自然や郷土料理など、世界遺産となった奄美大島にはたくさんの見どころや美味がありますが、伝統工芸品の「大島紬」も忘れてはなりません。

「いつかは大島紬を」。そう言われるほど憧れの存在となる着物であり、奄美大島を中心に作られている大島紬の魅了をご紹介しましょう。

世界三大織物のひとつ、大島紬

撮影:福澤昭嘉(Akiyoshi Fukuzawa)/提供:大島紬美術館

大島紬は約1300年の歴史をもつ伝統的な織物です。深い黒に加え、緻密な染めと織りの技術で知られる、日本が誇る絹織物の最高峰のひとつでもあります。その存在感は、フランスの「ゴブラン織」、イランの「ペルシャ絨毯」と並び、世界三大織物に数えられているほど。

鹿児島県南方にある奄美群島の織物で、絹100%。織る前に糸を染める先染めを行い、手織りの平織りで、絣合わせをして織上げたものは「本場大島紬」の名で、伝統工芸品に指定されています。

大島紬自体は奄美大島、鹿児島市、宮崎県の都城市などの地域で主に製造されてきましたが、そのなかでも奄美大島で作られた大島紬には「本場奄美大島紬」という認定マークが付けられていて、価値が高くなるのです。

image by:Shutterstock.com

実際、手にしたことがある方はおわかりですが、優雅な光沢を持ち、しなやかで軽くシワになりにくいという特徴があり、精巧な模様は芸術的です。

着たときの通気性に優れているので、大島紬は夏に着れば涼しく冬は暖かいというメリットを持っています。ちなみに大島紬の重さは一反(約12.5m)450gほど。

手紡ぎの糸を、「テーチ木」(シャリンバイ)という奄美エリアに生息する植物の煎汁液と、鉄分を含む泥土でこげ茶色に発色させ、手織りする伝統的技法がとられています。

また、製作工程は30以上にもわかれ、1つの着物を完成させるのに1年かかることも珍しくありません。


さらに150年から200年も長きにわたって着られる丈夫な織物と言われており、親子3代に渡って受け継がれるなど、世代を超えて愛用されることも多い織物なのです。

多様に移り変わってきた文様

image by:photoAC

大島紬の文様は、時代性や技術革新によって多様に移り変わってきたそうで、描かれるモチーフは自然の草花が常に主体となっており、男性向け、女性向けの2手に別れてバリエーションが広がっているのも特徴。

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奄美を代表する古典柄である龍郷(たつごう)柄は、女性用として奄美に自生するソテツの葉と実を幾何学模様で表現した大島紬の代名詞的存在に。亀甲柄は、男物の小付け模様の代表格。男性の風格を引立てるとされてきた、縁起の良い亀甲を象っています。

このほか男性用の代表的なものは、西郷柄、有馬柄、伝優柄、白雲柄など。女性用柄模様としては古典模様、幾何学模様、草花模様、更紗模様、モダンアートなどがあります。

泥で染める不思議な織物

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複雑な工程を経て、手作業で作られる大島紬。象徴的なのは、自然の中で染められる「泥染め」です。前述の通り、島に自生しているテーチ木と呼ばれるシャリンバイの幹を砕き、煮出した汁で染めを施します。

茶色に染められた絣(かすり)むしろを、泥田に入れて揉み込むと、テーチ木に含まれるタンニンと、泥の鉄分が結びついて化学反応を起こし、色が黒く変化していきます。

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この奄美の自然が作り出した泥染めですが、レシピのようなものはありません。テーチ木染めと泥染め、川で水洗いする作業を何度も繰り返すことで、美しい光沢と深みのある黒色に変化。これらすべて、職人による熟練の手業によって生まれるのです。

材料に使うテーチ木は場所や季節によって色の出方が違い、泥田の状態も日々変化するなど、大島紬を作るためには職人の勘が頼りなのです。

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